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僕らの時間は指輪と廻る  作者: 高山 和義
第3章 「時間軸」 ~豊嶋義男の場合~
13/15

その2

なかなか執筆の時間と気力が確保できず、ながらく更新できませんでした。

これからも途切れ途切れになるかもしれませんが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

教科書が手元にないまま、一限の授業を受ける。

取りに行けなかったわけではなく、そもそも無かったという、なんとも残念な結末である。

そういや章末問題を課題として出されたときに一旦家に持ち帰ったんだっけか。

……席が後ろで助かった。

朝は当然眠いし、教科書も無いしで仕方なく寝るという選択肢をとる。

いつもどおりだな、と隣席の友人の苦笑いも知らず、意識は暗闇へと落ちる。

現代文などどうでもよいのだ。

ふと意識が戻った。

でも、何も聞こえてこない。

見えているのは教室ではない、見渡す限りの真っ暗闇。

何も見えない、というより、何も見えていないのかもしれない。


【……しいよ】


「?」

暗闇の中で唐突に声が聞こえた。

とても小さい声、全部聞き取ることはできなかった。


【…なが離れて行ってしまう。私から】


また聞こえた。

声の主を探そうとするけれど、声の方向は定かにはわからない。

でも、この声は記憶の隅にひっかかるような、微妙な違和感を感じる。

どこか聞いたことがあるような……?


【離れていかないで、気づいて。お願い】


気づいて?

突然頭の中に話しかけてきて、気づいてとはどういうことなのか。

とはいえ、俺にはなんの心当たりも―


「…っと!?」

何かを踏み外したような感覚で今度こそ目が覚めた。

さっきまで普通に感じた教室の照明と太陽光が眩しい。

床に落ちたルーズリーフを拾い上げて、時間を見る。

まだ授業が終わるまでは時間があるのを確認して、とりあえず今度の小テストの範囲だけメモを取る。

どっちみち教科書がないと内容も確認できないので、書くだけ書いてまた暇になってしまった。

……それにしても、さっきのはなんだんたんだろう?

夢を見ていたのとも違う。というか、授業中の居眠りくらいでは夢を見ることはない。

今回は教科忘れも相まってたまたま睡眠が深かったというのも無理がある。

でも、さっきのはなんか違う。

何が?と言われてもわからないが、でも夢とは何かが違うという感覚はあった。最初、目が覚めたのかと思ったくらいだし。

正夢、という単語が頭に浮かんだ。

でも正夢というのは、夢で見たことが現実になって初めてわかるものであって、事が起きる前にわかるものとはちょっと違うはず。

なんというか、何かが違うというこの感覚を言い表せる良い表現がないのか?

……うん、わかんない。

語彙力が貧弱だった。現代文には自信があるんだけどな。

それにしても「気づいて」とは、いったい何に気づけばよいのか。

ただの夢ではないと感じていて、その中でそんなことを言われては気にしないわけにもいかないけれど、あまりにもオカルトというか幻想じみていて、事をうまくのみこめない。

(結局あれはなんだったんだ……?)

色々考えても、結論は「わからない」だった。


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