幕間①
わたしはいま、あの場所にいる。
四人でよく行った、あの場所に。
校庭の隅にひっそりとある、あの小さな丘に。
目印のように生えている百日紅や、丘の表面を覆い隠すように生えている背の低い木々。丸太を数本埋めただけのシンプルな階段。なぜか埋まっているコンクリートブロック。
一応、子どもがここで遊ぶことを考えてのことなのかもしれないが、この広い校庭の中でわざわざここまで来て遊ぶような子はほとんどおらず、人が来るようなことはほとんどない。
だけど、わたしたちは例外だった。
よく四人で集まっては、この場所を遊びの中心地点としていた。
人があまり来ないから、物を隠したりするのにはちょうどよかった。
給食のカップゼリーを開けないでここに置いておいたり、よしおなんか、家からこっそり持ってきたゲーム機を隠して置いたりもしていた。
わたしたちの思い出は、この場所と共にあった。
でも、わたしはいま、この場所にはいない。
だって、わたしはあの日、死んでしまったから。
この場所は、当時のまま変わらない。
それは、わたしたち以外の人がほとんど来ていないから。
いろんなものを入れて、茂みの中に隠してあるクッキー缶も、そして「あれ」も、あの時から何も変わっていない。
まるで時がとまったみたい。わたしと一緒。
三人は元気だろうか。
元気ならいいけど。
わたしのことは……、もう忘れちゃったよね。
しかたないよね。だってもう六年もたってるんだもん。
寂しい、寂しいよ。
今までのように、また四人で遊びたいよ。
でも、それはもう叶わないことだってわかってる。
でも、気づいてほしい。私の気持ちに。そして四人で作った「あれ」に。
「あれ」が、わたしと三人をつなぐ、たいせつなもの。
思い出して、わたしを。
思い出して、みんな。
思い出して、――くん。
もうこの世にいないわたしは、ただ願う事しかできない。




