乙女ゲームに転生しました!まさか、私が王道パターンの悪役なんてっ!!
皆さん、初めまして。
私、巷で流行りの“乙女ゲーム転生”をしてしまいました、一之瀬薔子と申します。
……皆さん?「また、乙ゲーの転生話!?」とか言わないでくださいませ!
その事に関しては、私本人が十分に感じている事なのですから!
……少し、泣いて良いですか…?
…いえ、泣いていては話が進みませんので、続きを話させていただきたいと思います。
話を聞くつもりの無い人は……スルーしてくださいな……。
先ず、私がこの世界の事に気が付いたのは、言葉を理解し始めた時でした。
少し、言葉のニュアンスに違和感を覚えたのです。
自分で話す分には、あまり違和感を感じなかったのですが、両親や兄姉、周りの人間の言葉使いに違和感を感じるのです。
自分自身、おかしいとは思いつつも、何処がおかしいのかわかりません。なので、誰にも相談も出来ない状態でした。
まあ、子供でしたから言葉使いも不自由でしたけどね。
え?“転生チート”ですか?
まだ、その時は無かったのです。違和感だけしか感じてなかったので…。
そんなこんなで、五歳まで違和感を抱きつつ過ごしていました。
そう、五歳までです。
五歳を過ぎた頃、父親の親友が子供を連れて我が家に遊びに来たのですよ。
…そうです。その子供こそが、まさに“王道”の証の“攻略者”様だったのです!
で、色々と思い出したのです。
この世界が“乙ゲー”であり、私が“悪役令嬢”だと言う事を!!
無理っ!!
絶対に、無理だから!
そんなん、私の人生の黒歴史になるの間違いないから!
てか、虐め反対!平和万歳!平凡カモンッ!!
やりたくないからねっ!
……あっ、失礼しましたわ。つい、前世の口調が出てしまいました…。
コホッ、気を取り直して続きを話させていただきますね?
父親の親友の息子、名前は、一条彰尚。
私の将来の婚約者で、俺様生徒会長になる予定の人です。
ええ、王道ですよ?王道を詰め込んだ乙女ゲームですからね。
容姿ですか?……王道ですから、容姿端麗です。天使みたいでしたよ。
学力とかも、王道だと思うので良いのではないのでしょうか?
まだ、彼は五歳ですからね。わかるのは、もう少し成長してからではだと思います。
私の両親は、神童だと褒め称えてますけどね!
お願いですから、あまり私に情報を与えないでくださいませ!
出来れば、疎遠の方向でお願いしたいのです!
……父親同士が親友だから、無理ですよね…。
え?その時の私ですか?
普通に、五歳児らしく挨拶しましたよ?
あちらは、五歳児らしくなかったですけどね…。
挨拶が終わった後、父親達は話があると言って、私と彼は、部屋から追い出されました。
…どうしろと?
取り敢えず、彼を私の部屋へと案内して、メイドにお茶とお菓子の用意をしてもらう事にしました。
何か食べてれば、気が紛れるかと思ったので。
お茶を持ってきてくれたメイドを下がらせて、ふたりっきりになったのですけど…。
これが、気まずい、気まずい。
何故か彼は、私を見つめてくる。
もう、見つめられ過ぎて穴が開くのではないかと言うぐらいの眼力で。
「流石“攻略者”様!眼力が半端無いです!」とか思い感動するべきか、「初対面の人間を見つめるな!恐いから!」と怯えるか。
私は、後者ですよ?
当たり前ですよね!恐いのですから!
だけど、ここで怯えているだけではいけないのですよ。
恐くても、相手は“お客様”なのですから。
「あの、彰尚様?」
先ずは、会話をしなければいけませよね?
「“様”はいらない」
いらないと言われましても…。
「彰尚君?」
「…………“彰”と呼べ」
まさかの愛称呼び!しかも、上からの物言い!!
攻略対象者様、ここに降臨されました!!いや、既に降臨してましたけどね!
「薔子。ここは、お前の部屋か?」
で、呼び捨て?攻略対象者様は一味違いますね!
「はい。私の部屋です。他の部屋が良かったですか?違う部屋に行きますか?」
なんですか?私の部屋では不満ですか?
……男の子には辛い、ラブリーな部屋ですけど。
はい、不満だと思われます。眉間に皺が寄ってますからね!
「…いや、問題はない」
え?そうですか?
問題はないのですか?問題はないのに、その眉間の皺はなんなのですか!?
その後も、色々と話をして、彼は帰りました。
話と言うより、質問責めだったような気がしますけど…。
小学校は何処に行くのかと言う話とか、話している間に抱いてたウサギのぬいぐるみの事を聞いてきたりしてましたね。
返答は、小学校に関しましては、お金持ちの宿命と申しましょうか、乙女ゲームの舞台のある学校に通うと言う事を伝えました。
両親の母校であり、兄姉が通っているので、私も通う事になるのでしょう。
……高校、どうしましょう?
ぬいぐるみは、デパートで一目惚れして買った事、お気に入りで、一緒に寝ている事を伝えました。
そしたら、口元を手で隠して横を向かれましたよ。眉間の皺が、増えてるのですけど…。五歳児なんだから、許してください。大きくなったら、ぬいぐるみと寝るのは止めると思いますし…多分?
後は、身長とか誕生日とか聞かれましたけど、聞いてどうするのでしょうか?
よくわかりません。攻略対象者だからでしょうか?
そして、その日の夜。
私は、前世の記憶を思い出した影響で高熱を出しました。
彼と会った時に、前世の記憶が流れてきていたのですが、体調に変化がなかったので油断していました。
話によくあるじゃないですか?“倒れる”とか“高熱を出す”とかの症状が出るって。
それがなかったので、油断していたみたいです。
今思えば、彼と話している間、頭がボォっとしてましたっけ。
心の声も、前世の口調が出てきましたし。
気が付いてなかっただけで、初期症状はあったみたいです。
それから、お約束のように三日間、高熱にうかされました。
それを聞いた彼が、見舞いに来たりして大変だった記憶がありますね。
メイドがいるから、看病しなくても良いと言うのに聞いてくれなかったり…。
何がしたいんですか?
そう聞きたかったんですけど、熱のせいで、上手く喋れませんでした。
彼の言葉も聞き取りできなかったので、早く帰ってほしかった記憶だけは鮮明にありますけどね。
一ヶ月後、彼との婚約が決まりました。
子供らしく、駄々をこねました。ええ、こねまくりましたよ?
そのお陰で、彼とは“婚約者(仮)”になりました。
正式な発表は、高校を卒業してから。
舞台は高校ですから、卒業さえしたら自由ですからね!
私、悪役回避の為に、頑張りたいと思います!
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