第3話
現実でもちょうど晩御飯の時間だった。うん、腹が膨れるっていうのは現実のいいところだな。
中では、美味いものは食べることができたが、心地の良い満腹感を得ることはできなかった。その分、量を食べれる、といったら良いかもしれない。
さて、ネットで情報収集だ。といってもゲームの情報じゃない。……いや、関連性はあるのだけれど。
調べているのは、現実での武器の作り方だ。特に弓。色々と種別があって、分かりにくいが、夢は広がる。
「何調べてんの?」
「んー? 弓の作り方。ゲームの方でスキルとったからなっ、て、いつの間に入って来やがった、勘九郎」
後ろから覗き見ていた、でかい影は、幼馴染のものだった。
「雲雀が怒るもんで逃げ出してきた。失敗したよなー。最初の街の事、先に話といたらよかった。さっちゃんは、どの街?」
「俺はニョルズだっけな」
「俺と雲雀はオーケアノス。うわ、やっぱ離れてるな。くっそ、合流できそうにない」
かなり、悔しがってる。こっちとしては、ソロプレイを楽しんでるんだから、そんな気にしなくてもいいのにな。
「ま、チョイチョイ進んでれば、いつか会えるだろ。で、どんな感じよ?」
そう聞くと、ニヤリと勘九郎は頬を緩めた。
「へへ、よくぞ聞いてくた。ふっふっふ、レベルが3まで上がったぜ。後、パーティ結成した。名付けて"鉄剣連盟"!」
もう、結成したのか! んでもってレベル3は素直に羨ましい。
「はえーな。何狩ったんだ?」
「象」
「ゾウ!?」
んなのいんのかよ!?
「よく、そんなの倒せたな、おい」
「実際最初だから出来たことだぜ。死に戻りしまくったしな。鼻の一振りで2・3人吹っ飛ぶし、最後は他のパーティも参加しての最終決戦みたいな感じだった」
「……それ、ちゃんと素材とかゲットできたの?」
「貰えなかった奴もいたけど、俺は象牙ゲットした。レア4だぜ」
よっしゃ、勝った!
「甘いな、勘九郎。俺はレア5を手に入れた」
「うそっ!? どうやって?」
「ハッハッハ、一発1000Gのお大尽アタックだ。高い初期投資になったが、リターンは凄かったぞ」
「そ、想像ができねぇ。爆弾でもつかったのか?」
爆弾はβで錬金術師が使ってたみたいだ。ハルさんも【錬金】使えるっていってたし、将来的に仕入れてもきいかもしれない。
いいなーと言う勘九郎に、思う存分自慢してやった。その後は、街の様子や、周辺状況の情報交換。2人ともゲームの話ばっかりだ。
「そういや、勘九郎。お前初期スキルはどうした?」
「ん? えーと確か【斧】【怪力】【両手持ち】【怒り】【金属鎧】【格闘】」
……脳筋だ。混じりっけ無しの脳筋が、ここにいる。
「完全、戦闘特化だなお前。大丈夫なの? そのスキル構成」
ていうか、パーティ名が鉄剣なのに斧使いなんだ。
「大丈夫だって。サポートはパーティに専門の人いるし。そういう、さっちゃんは?」
「俺は【弓】【槍】【細工】【調理】【遠望】【隠密】。それプラス、新規取得した【解体】」
後3つセットできるのか。スキル数が多いから、結構悩みどころではある。
「【弓】って、βの連中は、消費重くてきついっていってたけど。あ、そのための細工か。結構考えて構成してるよな、さっちゃん」
「ま、後発組だし、βの事前情報は揃ってるからな。そこそこ考えてるよ。【弓】も消費がきついってだけで、威力はソコソコあるって話だったしな。武器スキルはどれも一長一短って感じで、バランスとれてるんじゃない?」
とはいえ、ログインしてた時に見た限りだと、やっぱり剣使いが一番多かった。王道だし、使いやすいって噂だから、これは当然だろう。
後は杖装備か。魔法が使えるなら使ってみたいと思うのは、人の情。どうしよっかなー。攻撃魔法よりかは、補助魔法がほすぃ。
「そういや、雲雀ちゃんは、どんな感じだって ?」
ふと気になった。あの子βプレイヤーだし。
「ありゃ、競うのはムリだって。βの時のパーティで集まって、攻略最前線だとよ。レベル5って聞いた時は目眩がしたぜ」
……おおーう、異次元だな。既に倍以上開いてんのか。
「ま、俺らはノンビリいこうぜ。見て回るとこが、多いから、それで十分だろ」
「だな」
「一応、俺は明日の朝からログインするつもりだけど、さっちゃんは?」
机から、革表紙のスケジュール帳を取り出し、予定を確認する。
「こっちも朝から。昼からはバイト入れてあるから、夜にもっかい入るつもり」
「へー、頑張れよ。じゃ、俺そろそろ帰るわ。あ、ゲーム内の連絡先教えてよ。フレ申請送っとくから」
「了解。また何か情報あったら教えろよ」
「分かってるって。さっちゃんも何かあったら教えてよ?」
「OK、OK。んじゃ、またな」
勘九郎も結構やるなー。象牙には興味がある。出会ったらアイテム交換とかしたいなー。
「榊ー、風呂湧いたよー!」
階下から、母の呼ぶ声。よっし、風呂入って、さっさと寝て明日も頑張りますか!