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寸劇
この深く花車な霧のベールよ
幸も不幸も覆い被せる愛し切なさよ
やがては訪れるだろう光を秘しかくして
ああ、ペーソスの霧よ
不透明な純真をこの胸にそっと置いて
私の中にはあなたの血液が半分流れている
搾り取ることなんて出来やしないから
もう穏やかに参りましょう
私とあなたがしっくりいかないのは
私があなたに似すぎてしまったから
嫌いとか好きとか憎いとかそんなものは
もう溶けてしまって
不器用な私とあなたは
自分を好きになれれば良いのでしょうが
自分を認めない私たちは
互いに歩みよれない性分で
分かり合うことを嫌い
互いに縮まらない距離を保って
多分これからもずっとそうして
でもそれでいいと思うのです
私とあなたはそれで分かち合っているのだから
私たちはこれからも同じ空の下で生きる
記憶にはないけれど
写真の中の父は娘を抱いて笑っていた
この限りなく深遠な澄み切った空よ
飛ぶ鳥の映える色ざしの美しさよ
凛と聳えるビル群の朗々とした顔よ
おお、はろばろの空よ
太陽の輝きをこの胸にじっとぐっと強く




