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溺れない水の中で
溺れない水の中で溺れている
思いの泡がたくさん生まれ
空に向かって昇ってゆく
空は低くて狭い 色はない
思いの泡は空にぶつかり
ぺしゃんと潰れた
溺れる水の中で溺れないでいる
想いの高波を作ろうとするが
水は冷ややかにおちてゆく
空は高くて広い 色は強い
眩しくて目を閉じる
溺れない水の中で想いを探している
掴んでも掴んでもそれは思いであり
自らのためだけに作られた
悲しみの自己満足に過ぎない
想いは見当たらない
私のものではない
悲しみが降っていた
痛みが降っていた
苦しみが降り続いていた
こんなにも こんなにも
愚かさの身に潜ると
そこには何もない
想いやりはなかった
溺れない水の中で息を止める
せめて泡を作らないように




