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文字を溶かしてしまいたい
文字が逃げてゆく
文字を追いかける
捕まえた文字は私を制止する
私はそれを振り切って
まるで急かされるように
また別の文字を追いかけてゆく
競争なんかしたくない
沿道でただあなたに手を振りたい
いつだって 応援したい
それが出来ないことが悔しい
いつのまにか私が私を煽ってる
心の中をスパイクシューズが走ってる
いたずらに憶病になってゆく
慎重に言葉を選べば選ぶほど
言葉は固まってしまう
誰も傷つかない言葉はなんだろう
そんなことばっかり考えてる
心の中にスパイクが食い込む
本当は私が傷つきたくないんだ
「透明な涙は文字を溶かしてしまった」
ふと ある人の詩のフレーズを思い出す
押すこともなく引くこともない
心を月光が包みこむような優しく美しい詩だった
あなたは私のうたが嫌いになったの?
それとも初めから好きじゃなかった?
透明な涙が流せるなら
私も文字を溶かしてしまいたい
そう心は呟きながら
私は文字を残したいんだ
そう心は叫んでる




