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エピローグ

 マックスは捜査員達と病院内全てを調べると、ジェイクの言っていた通り、プログラムは国とは関係なく、病院の一部が独自に行っている物だった。その最高責任者でもあり、開発者でもある、ピーター・グレイを逮捕すると同時に、兄のマッキーニ・グレイも共犯の容疑で逮捕する。

 職員達は、ヒューストの言う通り、本来の目的は知らなかった様だが、違法の洗脳プログラムの実行犯として、それぞれを逮捕した。

 リストから所在を割り出し、保護された他の四人の子供達は、別の病院へと移され、治療を受ける事となる。八歳の子は、ヒューストの睨み通り、トビー達と同じ町に住んでいた。子供達の両親も、カウンセリングを受ける事となった。

 河原一体は全て、ジェイクの案により、汚染物が充満していると言う事にし、立ち入り禁止区域とされる。

 ジェシーは帰国すると、すぐさまジェイクが迎え行き、二十四時間監視されている病院へと連れられ、治療を始めた。

 慌しく行われる中、マックスはヒューストとジェイクに何が有ったのか、事情を聞くも、二人は苦笑いをするだけだ。案の定、マックスはあれこれと押し付けられた事を、怒っていたが、二人の奢りで飲みに行く事で、機嫌を直してくれた。


 そしてトビーの葬儀の日・・・。

 ヒューストは、墓石の周りに集まる人々の後ろに、隠れる様に佇んでいた。

 小さな御棺が土の中へと入れられると、周りからはすすり泣く声が聞こえて来る。中でも一番悲しんでいる、父親の姿を目にすると、胸が締め付けられ、やり場の無い気持ちになってしまう。

 父親は、妻だけでなく、子供も失ってしまい、一人になってしまった。この事件の一番の被害者は、トビーの父親なのかもしれない。

 「トビー・・・すまない・・・。」

 ヒューストは誰にも聞こえない位、小さな声で囁くと、その場を後にしようとした。すると遠くから、女の子の手を引いて、こちらに向かって来るジェイクの姿が見えた。

 ヒューストはジェイクの側まで行くと、悲し気な笑顔で言う。

 「お前も来たのか・・・。」

 「あぁ、監視役として・・・だがな・・・。」

 ジェイクはそう言うと、そっと手を繋ぐ少女の方へと視線をやる。

 ヒューストは少女を見ると、柔らかい笑顔で言った。

 「やぁ、こんにちは。トビーにお別れを言いに来たのかい?」

 少女は無言で頷いた。

 「ヒュースト、こちらはジェシーだ。」

 「あぁ、知っているよ。」

 ジェイクが紹介するも、ヒューストは既に分かっていた。この場所に、ジェイクと来る女の子は、ジェシーしか居ない。

 ヒューストは愛おしそうにジェシーの顔を見つめると、ようやく想い人に会えた気分になる。

 「少し話すか?」

 ジェイクにそう言われると、「あぁ・・・。」と小さく頷く。

 ジェイクは二人の側から少し離れると、ヒューストとジェシーの二人きりにさせた。

 「ジェシー、トビーに会いたいかい?」

 優しくヒューストは問い掛けると、ジェシーは小さく頷いた。

 「どうしたら会えるのか、知っているかい?」

 「知らないわ。まだ教えて貰っていないから。」

 ジェシーのその言葉を聞き、ヒューストは安心をする。

 「どうしたら会えるの?」

 寂しそうな顔で尋ねて来るジェシーに、ヒューストの顔も、思わず悲し気な表情へと変わってしまう。

 「そうだな・・・。残念だが、もう会う事は出来ないんだよ。会えるとしたら、夢の中か、思い出の中だ。」

 「夢か、思い出?」

 「あぁ、そこでなら、会えるよ。ジェシーの心の中で会うんだ。」

 そう言うと、ジェシーはニコリと笑った。

 「何だか素敵ね。」

 「あぁ、そうだね。」

 ヒューストも笑顔で頷くと、ふと空を見上げた。

 真っ青に広がる空は、滝壺で沢山の石の、青い光に包まれていた時の風景を思い出させる。石が青く光っているのは、妖精が青い空を恋しく想っていたせいなのだろうか。

 「ジェシー、妖精は・・・どこから来るのか知っているかい?」

 ふとヒューストが尋ねると、ジェシーは小さく首を横に振り、「知らない。」と言う。

 「妖精は・・・。」

 ヒューストはジェシーの顔を見つめると、優しく頭を撫でながら、笑顔で言った。

 「妖精は、とても悪い所から来るんだよ。」


ーENDー

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