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8.
「やっと帰った…。」
私は十字架を机に置いた。
「こんなのただのおもちゃなのになぁ。」
朝、十字架がハルトに当たったとき、確かに腕には火傷のような痕がついた。
拾い上げようと触れた指先も火傷していた。
私が驚いたのはもちろんやけど、それよりハルトが驚いていた。
十字架が苦手だとわかっていたらあんな顔しなかっただろう。
「あー!!何であいつのことばっかり考えてんの!?」
最後にハルトが見せた寂しそうな顔がなぜか頭に焼き付いてはなれない。
色々ひどいことされたのに…。
おまけにキスまでされたのに…。
「ダメだ、寝よ。」
パソコンを落として、ベッドにもぐりこんだ。
ついつい考えてしまうハルトのことを、忘れるように…。
出会わなかったことにすればいい、この間のことも忘れてしまえばいい。
そう思っていてもなかなかハルトは頭の中から消えてくれなかった。
***
次の日の朝。
私は十字架を握り締めて、玄関のドアを勢いよく開けた。
「な、なんだ、居ないじゃん。」
そこにハルトの姿は影も形もなかった。
少しだけ期待していた自分がバカらしかった。
「もう来ないのかなー。」
空を見上げて呟いた。




