4.
ハルトの言うとおり屋上に連れてきた。
高所恐怖症やからほんとはこんなとこ連れてきたくなかったのに…。
そんな私を置いて、ハルトは手すりに近づいた。
私は手すりから大分離れたところで、ハルトを見てた。
「ねぇ!はやく教えてよ!!」
「何を?」
「あなたが何なのかってこと!!教えてくれるんでしょ!?」
「あぁ、いいよ。」
ハルトは唇の端を吊り上げて笑うと、手すりの上に飛び乗った。
「ちょ、危ないから!!」
「平気。」
こっちを向いてニヤニヤしている。
この人、ほんとに頭おかしいのかな…。
それともただの自殺願望者?
本当に厄介なものをかかえこんでしまったと後悔した。
「ねぇ、はやく降りて!!」
「…わかった、降りる。」
そういうと、ハルトはそのまま後ろに飛び降りた。
ここは20階建てのマンションの屋上だ。
「ハルト!!!??」
怖いのも忘れて私は手すりに駆け寄って、下を覗き込んだ。
「どこ見てんだよ、俺はこっちだよ。」
上から声がした。
声がした方を見上げると私は驚いた。
「え……?」
そこには、漆黒の翼を広げ、月明かりを隠して、男が宙に浮いていた。
「俺の正体だ。」
笑った唇は血のように紅く、翼は全てを飲み込むように黒い。
羽の一枚一枚まで漆黒のその翼は、不覚にも見とれてしまうものだった。
翼が動くたびに、風が俺私の髪を揺らした。
「どうした?知りたかったんだろ?」
私はその場にへたりこんだ。
ハルトはゆっくりと目の前に降りてきた。
「あなた一体、何なの…?」
途切れ途切れに言葉を発する。
漆黒の翼はハルトの体を覆ってしまうくらい大きいものだった。
「見ればわかるだろ?」
「きゅ、吸血鬼…?」
「バカ。あんな血に飢えたやつらと一緒にすんな。まぁ、俺らもちょっと頂くこともあるけど。」
顔から血の気がひくような気がした。
「あぁ、でもそれは特別な時だけだし。死にかけた時くらいかな。普段は普通にもの食べるし、昼間でも外出れるし。」
「じゃあ…あなたは、何?」
「俺は俗に言うまぁ、『悪魔』だ。ちょっと死神に近いところもあるな。」
頭がクラクラする。
話についていくことができない。
「信じられないか?」
「…そんなもの見せられたら、信じないわけに行かないでしょ…。」
「まぁ、そうだろうな。」
「で、でも!何で空から降ってきたの?」
「あー…。」
ハルトは頭をかいた。
「ちょっとバカやってな。」
「な、何を?」
「まぁ、色々と。遊びすぎたから。」
ハルトはゆっくり私に近づいてきた。
「俺、お前が気にいった。」
ハルトの手が私の顔に添えられる。
人よりは鋭い、爪が生えている。
「俺の女になれよ。」
「……はぁっ!?」
驚いている紗弥の額に俺はそっと唇を落とした。




