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月と翼の夜  作者: 由宇
4/17

4.

ハルトの言うとおり屋上に連れてきた。

高所恐怖症やからほんとはこんなとこ連れてきたくなかったのに…。


そんな私を置いて、ハルトは手すりに近づいた。

私は手すりから大分離れたところで、ハルトを見てた。


「ねぇ!はやく教えてよ!!」

「何を?」

「あなたが何なのかってこと!!教えてくれるんでしょ!?」

「あぁ、いいよ。」


ハルトは唇の端を吊り上げて笑うと、手すりの上に飛び乗った。


「ちょ、危ないから!!」

「平気。」


こっちを向いてニヤニヤしている。

この人、ほんとに頭おかしいのかな…。

それともただの自殺願望者?

本当に厄介なものをかかえこんでしまったと後悔した。


「ねぇ、はやく降りて!!」

「…わかった、降りる。」


そういうと、ハルトはそのまま後ろに飛び降りた。

ここは20階建てのマンションの屋上だ。


「ハルト!!!??」


怖いのも忘れて私は手すりに駆け寄って、下を覗き込んだ。


「どこ見てんだよ、俺はこっちだよ。」


上から声がした。

声がした方を見上げると私は驚いた。


「え……?」


そこには、漆黒の翼を広げ、月明かりを隠して、男が宙に浮いていた。


「俺の正体だ。」


笑った唇は血のように紅く、翼は全てを飲み込むように黒い。

羽の一枚一枚まで漆黒のその翼は、不覚にも見とれてしまうものだった。

翼が動くたびに、風が俺私の髪を揺らした。


「どうした?知りたかったんだろ?」


私はその場にへたりこんだ。

ハルトはゆっくりと目の前に降りてきた。


「あなた一体、何なの…?」


途切れ途切れに言葉を発する。

漆黒の翼はハルトの体を覆ってしまうくらい大きいものだった。


「見ればわかるだろ?」

「きゅ、吸血鬼…?」

「バカ。あんな血に飢えたやつらと一緒にすんな。まぁ、俺らもちょっと頂くこともあるけど。」


顔から血の気がひくような気がした。


「あぁ、でもそれは特別な時だけだし。死にかけた時くらいかな。普段は普通にもの食べるし、昼間でも外出れるし。」

「じゃあ…あなたは、何?」

「俺は俗に言うまぁ、『悪魔』だ。ちょっと死神に近いところもあるな。」


頭がクラクラする。

話についていくことができない。


「信じられないか?」

「…そんなもの見せられたら、信じないわけに行かないでしょ…。」

「まぁ、そうだろうな。」

「で、でも!何で空から降ってきたの?」

「あー…。」


ハルトは頭をかいた。


「ちょっとバカやってな。」

「な、何を?」

「まぁ、色々と。遊びすぎたから。」


ハルトはゆっくり私に近づいてきた。


「俺、お前が気にいった。」


ハルトの手が私の顔に添えられる。

人よりは鋭い、爪が生えている。


「俺の女になれよ。」

「……はぁっ!?」


驚いている紗弥の額に俺はそっと唇を落とした。


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