14.
最近、物騒なニュースが続いている。
鋭利な刃物で切り裂かれて殺される人が多発していた。
男も女も関係ない。
盗られているものもないことから、警察は殺人事件として捜査してるらしい。
「ここんとこ物騒だなぁ。」
「あぁ、そうですね。」
学校の先輩が話しかけてきた。
「お前も気をつけろよ?」
「はい、大丈夫ですよ。」
ハルトが私のもとから消えてからもう大分経った。
よく考えてみれば、あの日からしばらくしてから物騒なニュースが続くようになった。
「ハルトに限って、そんなことないよね…。」
***
その日の帰り道。
私は先輩に誘われて飲みに行った。
「じゃあね、紗弥。また明日。」
「今日はありがとうございました。」
先輩と別れて、一人暗い夜道を歩く。
「うあああっ!!!」
「えっ!?」
道を歩いていると、いきなり男の人の叫び声が聞こえた。
人通りも少なく、住宅地でもないこの辺では、私の他に聞こえた人はいないらしい。
叫び声が聞こえた裏路地に、私は入っていった。
「アホなやつ。」
月に照らされて、手を血まみれにして立っている男が一人。
漆黒の翼は相変わらず大きかった。
頬に飛んだ血が肌の白さを引き立たせている。
血に濡れた指先を唇に当てていた。
「ハルト……?」
ゆっくりとこっちを向いたハルトの眼は、血に飢えた獣の眼だった。
私の姿をみて驚いたように動きを止めた。
「……何しに来たんだよ。」
「た、たまたま、通りかかって…。」
はぁ、と髪をかきあげるハルトは、私が知っているハルトとまるで別人だった。
「帰れ。」
「え?」
「帰れって言ってんだよ!!」
こっちを睨み、口調を荒げる。
こんなハルトの表情を見たことがなかった。
私はそのまま動けなかった。
「それとも、ほんとに殺されたいか?」
“ダンッ”
私は塀に押し付けられた。
ハルトの手が頬を滑る。
血に濡れた指先には、鋭い爪が生えている。
「今のお前は、ただの人間だ。殺すことなんて、簡単なんだよ。」
唇の端を吊り上げて笑うハルト。
「嫌っ!!!」
私はハルトを突き飛ばして走った。
いつの間にか泣いていて、それでも、走り続けた。
部屋の中に入って、そこでやっとその場にしゃがみこんだ。
鏡に映る私の顔には、血の跡がついていた。
「何で……。」
涙が頬を伝う。
「まだ、こんなに好きなのに…。」
そのときだった。
「っあ…!」
体がビクンと震える。
私が、変わる時が来た。
「んっ…、く…!」
手をぎゅっと握ると、カタカタと自分の手が震えているのがわかった。
目の前が涙でぼやける。
体が熱い。
「あぁあっ!!」
ばさり、と音をたてて翼が現れた。
「こんなの、なかったら…。」
荒い息遣いのまま呟いた。
「こんなの私は望んでない!!!」
ただ涙を零して、自分の運命を恨んだ。




