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月と翼の夜  作者: 由宇
14/17

14.


最近、物騒なニュースが続いている。

鋭利な刃物で切り裂かれて殺される人が多発していた。

男も女も関係ない。

盗られているものもないことから、警察は殺人事件として捜査してるらしい。


「ここんとこ物騒だなぁ。」

「あぁ、そうですね。」


学校の先輩が話しかけてきた。


「お前も気をつけろよ?」

「はい、大丈夫ですよ。」


ハルトが私のもとから消えてからもう大分経った。

よく考えてみれば、あの日からしばらくしてから物騒なニュースが続くようになった。


「ハルトに限って、そんなことないよね…。」


***


その日の帰り道。

私は先輩に誘われて飲みに行った。


「じゃあね、紗弥。また明日。」

「今日はありがとうございました。」


先輩と別れて、一人暗い夜道を歩く。


「うあああっ!!!」

「えっ!?」


道を歩いていると、いきなり男の人の叫び声が聞こえた。

人通りも少なく、住宅地でもないこの辺では、私の他に聞こえた人はいないらしい。

叫び声が聞こえた裏路地に、私は入っていった。


「アホなやつ。」


月に照らされて、手を血まみれにして立っている男が一人。

漆黒の翼は相変わらず大きかった。

頬に飛んだ血が肌の白さを引き立たせている。

血に濡れた指先を唇に当てていた。


「ハルト……?」


ゆっくりとこっちを向いたハルトの眼は、血に飢えた獣の眼だった。

私の姿をみて驚いたように動きを止めた。


「……何しに来たんだよ。」

「た、たまたま、通りかかって…。」


はぁ、と髪をかきあげるハルトは、私が知っているハルトとまるで別人だった。


「帰れ。」

「え?」

「帰れって言ってんだよ!!」


こっちを睨み、口調を荒げる。

こんなハルトの表情を見たことがなかった。

私はそのまま動けなかった。


「それとも、ほんとに殺されたいか?」


“ダンッ”

私は塀に押し付けられた。

ハルトの手が頬を滑る。

血に濡れた指先には、鋭い爪が生えている。


「今のお前は、ただの人間だ。殺すことなんて、簡単なんだよ。」


唇の端を吊り上げて笑うハルト。


「嫌っ!!!」


私はハルトを突き飛ばして走った。

いつの間にか泣いていて、それでも、走り続けた。


部屋の中に入って、そこでやっとその場にしゃがみこんだ。

鏡に映る私の顔には、血の跡がついていた。


「何で……。」


涙が頬を伝う。


「まだ、こんなに好きなのに…。」


そのときだった。


「っあ…!」


体がビクンと震える。

私が、変わる時が来た。


「んっ…、く…!」


手をぎゅっと握ると、カタカタと自分の手が震えているのがわかった。

目の前が涙でぼやける。

体が熱い。


「あぁあっ!!」


ばさり、と音をたてて翼が現れた。


「こんなの、なかったら…。」


荒い息遣いのまま呟いた。


「こんなの私は望んでない!!!」


ただ涙を零して、自分の運命を恨んだ。


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