10.
「ん…。」
久しぶりに、夢を見た。
小さい頃はよく見ていた、男の子と一緒に遊ぶという、どうってことない夢。
最近すっかり忘れていたけど、何だか今考えてみると、夢の中に出てくる男の子がハルトに似ている気がした。
「気のせいか…。」
“カタ”
小さな物音が窓際から聞こえた。
「ハルト!?」
窓に駆け寄った私の目に映ったのは…。
「今晩は。」
「えっ…。」
ハルトとは違う、フード付の長いローブを着た男の人。
ただひとつ同じなのは、その人にも黒い翼があった。
「だ、誰!?」
「俺の正体なんか、知らなくてもいいよ。だって…。」
ふわり、と私の目の前に降りた。
「お前もう死ぬし。」
ニヤ、と歪ませた唇は血のように紅い。
およそ健康的とはいえない透き通るような真っ白な肌と対比するように…。
私は1歩後ずさった。
「あなたは何なの!!」
「俗に言う、死神ってやつ。」
「しにがみ…?」
その人の手にはいつの間にか、絵で見るような大きな鎌が握られていた。
「俺は別にあんたに恨みがあるわけじゃないけど、これも仕事だからな。悪く思うなよ。」
「い、嫌っ!!来ないでっ!!」
何なの、ほんとに…。
悪魔に会って、そいつ追っ払ったと思ったら、今度は死神?
もうどうなってるかわかんないよ…。
それでも現に、死神は目の前にいる。
これはまぎれもない真実。
「もう、死ななきゃいけないの…?」
「おん。」
「まだ、私若いんだよ?ついこの間20歳になったばっかり。」
「そうらしいな。」
「これからやりたいこと、いっぱいあるんだよ?」
「皆そういう。」
「…そっか。」
私の寿命もここまで。
考えてみれば、そんなに後悔するほどの人生でもない。
そして、これからを期待できるようなものでもない…。
でも、たった1つだけやり残したこと。
ハルトに、もう1回だけ、会いたかった…。
自分の命の瀬戸際についこの間会ったばかりの悪魔のことを考えるなんて、おかしいかもしれないけど。
「わかった。しょうがないんね、寿命なら…。」
「ものわかりいいんだな。」
「うん。神様恨むよ、こんなんはやく死なせて!って。」
「まぁ、神様じゃないけどな、寿命決めてるのは。」
「そうなんだ。」
不思議と、悲しみはもう感じない。
ただ、空しさだけが心に浮かぶ。
自然と笑みが浮かんだ。
「行こうか?」
「待った!!!」
大きな翼が空を隠して、月明かりを遮った。




