第四話 ノクス編 接触——元暗殺者ドゥルス
その男が姿を現したのはノクスが隠れ家に戻った直後だった。
気配は、あった。
しかし——殺意がない。
それが奇妙だった。
「入れ」
ノクスが言うと、扉の陰から男が現れた。
三十代半ば、痩身。
目に感情がない。
その目の質が、カインのそれと似ていた。
長く暗い仕事をしてきた者の目だ。
「……七賢院から来た」
男は言った。
「元、だ」
ノクスは訂正した。
男は少し間を置いてから、頷いた。
「元、七賢院の専属暗殺者です。名前はドゥルス。……あなたに話があって来ました」
「カイン」
ノクスが言うとカインがドゥルスの前に立った。
試練は一時間かかった。
戦闘、尋問、嘘の検証。
カインは何も言わず淡々と続けた。
ドゥルスは途中で逃げようとしなかった。
それが一つの答えだった。
「本物だ」カインが言った。
「七賢院の内部を知っている。嘘はない」
ノクスはドゥルスを見た。
「なぜ裏切る」
ドゥルスは少しの間答えなかった。
それから言った。
「……子供を殺せと命令された。七賢院の計画を知りすぎた商人の家族です。子供が二人いた」
「断ったのか」
「断りました。だから——次は俺が消される番になった」
沈黙。
ノクスは立ち上がり窓の外を見た。
夜の王都。
光と影が交互に続く石畳。
「七賢院の内部情報を提供できるか」
「できます。賢者四番の動き、影糸の暗号体系、王宮内の接触ルート——知っていることは全て」
「代わりに何を求める」
「命と、身元の保護だけです」
ノクスは振り返った。
「いい。カイン、預かれ」
カインは無表情のまま頷いた。
ドゥルスは小さく息を吐いた。




