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光と影、二つの魂  作者: そら
第2章 「それぞれの戦場」
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第三話 アルス編 空白の審議——逃げた評議会

審議の日は、晴れていた。


公開審議の場として用意されたのは、王都の市政広場に隣接した評議場だ。

市民も傍聴できる。

貴族の代表者、教会の代表者、第三者として騎士団の立会人が揃っていた。


ラーテス賢者評議会の席は空だった。


使者も来なかった。

連絡もなかった。

ただ席が空いていた。


シルヴィアが手帳に何かを書き留めながら静かに言った。


「来ませんでしたね」


「来るとは思っていなかった」アルスは答えた。


「では——なぜ申請したのですか」


アルスは評議場を見渡した。

傍聴席には市民の顔がある。

商人、職人、子供連れの母親。

彼らはラーテス賢者評議会という名前を知っている。

学術と知の府として知られた権威ある組織の名前を。


「逃げた」という事実が今この場所で生まれた。


証人はこの広場にいる全員だ。


「来させないために申請したんです」アルスは静かに言った。

「来れば法的根拠を問われる。来なければ——逃げた、という事実が残る。どちらに転んでも、評議会の信頼は削れる」


シルヴィアは少しの間アルスを見た。

それから手帳を閉じた。


「……分かりました。今日の記録は完全な形で残しておきます」


「頼む。傍聴者の証言も記録しておいてくれ」


評議場を出ると市民の一人が声をかけてきた。

六十代の老職人で、目に怒りの色があった。


「聖枢機卿様。評議会のやつらは……逃げたんですね」


アルスは静かに頷いた。


「孤児院の子供たちは、今日も変わらずそこにいます」


老職人は何かを言おうとして止まった。

それから深く頭を下げた。


その背中を見ながらアルスは思った。


証拠は書類だけではない。


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