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光と影、二つの魂  作者: そら
第2章 「それぞれの戦場」
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第一話 アルス編 王妃の感謝——静かな誓約

王宮の奥の間は、昼でも光が薄い。


厚い石の壁が外の音を遮り、長い廊下の先にある寝室にはいつも静けさだけが満ちていた。


アルスがその部屋を訪ねたのは、王妃の回復が医師たちに確認されてから三日後のことだった。


聖枢機卿カーディナル様、お待ちしておりました」


侍女が深く頭を下げた。

扉の向こうから穏やかな声が聞こえた。


「どうぞ、入ってください」


部屋の中には王妃と王の二人がいた。


王妃——イレーナは窓際の椅子に座っていた。

一週間前と同じ顔だ。

しかし頬の色が違う。

死に向かっていた肌の青白さはなく、柔らかな血の色が戻っている。

その変化だけがあの十分間に何が起きたかを証明していた。


「先日は……ありがとうございました」


イレーナは静かに言った。

声に感情がある。

しかし抑えている。

貴族の女性として育てられた抑制と、それでも滲み出る何かが混在していた。


アルスは頭を下げた。


「お体の具合はいかがですか」


「おかげさまで」


イレーナは少し微笑んだ。


「……あの夜のことを、ずっと考えていました。意識が薄れていく中で、光が見えたんです。白い光。それがどこから来たのか、目が覚めてから初めて分かりました」


アルスは何も言わなかった。

ただ静かに聞いていた。


「あの毒は」イレーナは声を落とした。


「偶然ではないと思っています」


沈黙。


王が口を開いた。

五十代の男で顔に疲労と怒りの両方が刻まれていた。


「聖枢機卿、率直に聞く。あれは誰の仕業だと思うか」


アルスはしばらく考えてから答えた。


「陛下、今は申し上げられません。しかし——証拠が整う時が来ます。その時まで、このことはお二人の胸だけに収めていただけますか」


「証拠が整う」王は繰り返した。「つまり……お前は既に動いているということか」


「はい」


一言だけ答えた。

王は何かを考えるように目を細め、それから静かに頷いた。


「分かった。待とう」


部屋を出る直前イレーナが言った。


「聖枢機卿様」


アルスは振り返った。


イレーナは何かを言おうとして止まった。

それからただ静かに言った。


「……また、診に来てください」


「はい」


アルスは答えた。


廊下に出てからライトが小声で言った。「王妃様は……ずっとアルス様の方を見ておられましたね」


「そうか」


アルスは前を向いたまま歩き続けた。


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