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第十五話 アルス&ノクス編 第一章の終わりに——二つの鏡
王都ラーテスの夜明け。
神殿の鐘が鳴る。
白いローブの青年が窓の外を見る。
橙色の光が街を染めていく。
美しい朝だ——彼はそう思う。
右手首の傷跡を袖で隠した。
廊下ではライトが待っている。
今日もまた山積みの書類と共に。
アルスは歩き出した。
子供たちが待っている。
王宮が待っている。
七賢院との戦いが続いている。
そして——夜の記憶がない、というその空白が。
* * *
同じ頃、王都の外れの隠れ家で黒いフードの男が地図の前に立っていた。
夜が、終わりに近づいている。
カーテンの向こうがわずかに白み始めていた。
右手首の傷跡を一瞥した。
証拠は増えている。
計画は進んでいる。
しかし——頭の奥のぼやけは今夜も消えない。
一人は夜が明けると同時に動き始める。
一人は夜が終わると同時に止まる。
彼らは会ったことがない——はずだ。
しかし、それぞれの胸の奥に形のない既視感が漂っている。
何かを知っている。
何かを覚えている。
何かを、忘れている。
王都の朝が始まる。
今日も光と影は別々に動く。
——しばらくの間は。
そして南の空に、かすかに煙が見えた。
竜の咆哮が遠くで鳴り山が揺れていた。




