第十四話 七賢院編 密謀——二人を引き裂く工作の始まり
七賢院本部の深部。
薄暗い会議室。
七人の「賢者」のうち三人が集まっていた。
議題は一つ——「亡者とアルス・ヴェインの件」だ。
「王妃の件は失敗に終わった。アルス・ヴェインが——十分で解毒しきった」
白髪の老人が言った。
「賢者一番」と呼ばれる男だ。
「典医ガロンは既に役に立たない。次の手を議論する」
「アルス・ヴェインの能力が想定外だった。六段階の回復魔法師という触れ込みだったが——我々が仕掛けた毒を十分で完全解毒した。六段階の回復魔法で可能な領域を超えている。枢機卿はさらに上の力を隠している」
「隠しているとすれば——理由は何だ」
「狙われると知っているからだ。賢明な男だ」
「亡者については——直接排除を試みたが失敗した。向かった者が誰一人戻っていない。唯一、遠方から魔力を観測していた者が一名いた。その者の証言では——段階測定不可能。計器の上限を振り切ったと」
もう一人の賢者が言った。
「測定不可能とは?」
「我々の魔力計では、上限の十段階を超えている。——つまり」
「体系が違う」
長い沈黙。
「竜血の末裔か」
白髪の老人が低く言った。
「千年前に滅んだとされる竜血の血脈が——今この時に現れるとは」
「どう対処する?」
「直接の力による排除は——不可能と判断する。方法を変える」
賢者三人の目が互いに交わった。
「アルス・ヴェインと亡者——二人が繋がる可能性は?」
「ない。二人は正反対の存在だ。聖者と犯罪者が協力するはずがない」
「......だが、二人の動きが、奇妙に連動している。王妃の件、商人の件——亡者が崩した後を、枢機卿が固める形になっている」
「偶然だ」
「偶然にしては——精度が高すぎる」
長い沈黙があった。
「二人が繋がる前に——手を打つ。どちらかを、もう一方の『敵』に見せかける工作を始めろ。聖枢機卿に、『亡者があなたを排除しようとしている』という情報を流せ。亡者の耳には、『枢機卿が騎士団と組んであなたを追っている』という情報を入れろ」
白髪の老人は言った。
「二人が互いを敵と認識すれば——彼らの動きが止まる。その間に、我々は巻き返す」




