第十二話 ノクス編 影の収穫——七賢院の証拠を積む
その夜、ノクスは隠れ家に戻りカインとエルザと共に今週集めた情報を整理していた。
テーブルの上には、七賢院の東区拠点から押収した書類の写しと王宮内拠点から得た通達文が並んでいた。
「整理が終わった分を教えてくれ」
エルザが書類を一枚ずつ手にとりながら説明した。
「まず商業区の書類から。七賢院は国内三十以上の商会に資金を渡し、特定の商品の価格を人為的に操作していることが分かりました。穀物と薬草が主な対象です」
「価格操作——民への直接的な収奪か」
「はい。飢饉の際に穀物価格を吊り上げることで、農民と都市の貧民から富を吸い上げる構造です。この書類には、関与した商会の名前と、七賢院側の担当者の名前が記されています」
「証拠として使えるか」
「十分なものです。ただし、これを公表するには——受け取る側、つまり王や司法機関が七賢院から自由でなければなりません」
「そこが問題だな」
カインが言った。
「現在の最高裁判官は、七賢院の影響下にあります。司法経路では潰される。となると——公表の手段は、独立した第三者機関。」
「第三者機関」ノクスは言った。
「現在この国で、七賢院から完全に独立しているのは——」
「教会です」エルザが静かに言った。
「聖枢機卿アルス・ヴェインが率いる教会は、ラーテス賢者評議会の圧力を公開審議で退け、独立性を維持しています。評議会の影響下に入っていない公的機関は、現状この国では教会だけです」
しばらく沈黙があった。
「......教会を使う」
ノクスが言った。
「直接は渡せない。しかし——間接的に、書類の存在を示す証人を作れる。調査官セリア・ハルトが七賢院の証拠を掴めるよう、情報の道筋を作れ」
「彼女が証拠を掴めば——」
「騎士団経由で証拠が表に出る。その証拠を教会が確認し、公の場で提示する」
「教会と騎士団が連携すれば、七賢院は封じられる」
「そうだ」
エルザが書類を整えながら静かに言った。
「ノクス様は——最終的に、自分の手を汚さずに七賢院を倒そうとしているのですか?」
ノクスは少し間を置いた。
「俺の手が汚れることは構わない。しかし——この国の秩序を壊す形で七賢院を倒しても、意味がない。秩序の中で、七賢院を断罪させる」




