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光と影、二つの魂  作者: そら
第一章 「光の朝と、影の夜明け前」
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第九話 セリア編 調査官セリア・ハルト

王都騎士団の調査局は、中央区にある三階建ての建物だ。


セリア・ハルトはその三階の一室に一人でいた。

壁一面に貼られた地図と書類。ランタンの光の中で、「亡者もうじゃ」に関するこれまでの報告書を読み返していた。


二十五歳。

騎士団調査局でも随一の分析能力を持つと評価される女性だ。

金色の髪を一束に束ね制服を着たまま椅子に座っている。


「亡者」——。


裏社会の影の支配者。

七つのギルドを傘下に持ち、しかし直接の暴力よりも「情報と経路の支配」によって君臨する男。

傘下のギルドは暗殺・情報・密輸・賭博・偽造・人材斡旋・金融の七分野にわたり、かつては互いに牽制し合っていた独立組織を五年かけて一つずつ吸収したとされる。


先任の調査官たちが三年かけて追い続けたが、実像に近づいた者は一人もいない。

目撃証言もある。

黒いフードの男。

声は低く感情がない。

魔法を使うがその段階は不明——「段階を超えている」という証言もある。


セリアは報告書を閉じ、窓の外を見た。


「なぜ、動くんだろう」


独り言だった。

「亡者」が関与した事件の現場には、必ず死体がある------これは複数の証言が一致している。

彼の介入が確認された事件は、大半が「ラーテス賢者評議会の工作の完全な潰滅」だ。

生き残りがいない。

証言者が出ない。

だから実像が掴めない。


純粋な悪には見えない。

しかし、それが罪を免除する理由にはならない。


法を無視した力の行使は、たとえ善意であっても秩序を壊す。


セリアは書類に目を戻した。

先週、王都東区の倉庫でラーテス賢者評議会の密偵と護衛が制圧された事件の報告書。

現場に残っていたのは血痕と評議会の工作文書だけだった。


「誰かが情報を取って——全員始末した」


セリアは眉をひそめた。


「組織的な動きだ。証拠だけ残して、口は全て塞ぐ。賢者評議会に対して動いている——しかも、徹底的に」


彼女は立ち上がり地図に近づいた。


「次はどこだ、亡者——」


独り言に誰かが答えるはずもなかった。

しかしセリアはこの追跡が通常の犯罪捜査とは違う何かだと感じていた。

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