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バレてはつかまるの世界線シリーズ

転生者の私は聖女である事を隠したい!

作者: 桃井夏流

バレては〜世界線シリーズ、あの国の輪廻転生の秘密に迫ります!ご都合主義です、すみません。


夜。特に満月の夜。それは私が一番嫌いな時間帯だ。何故なら…。


「うーん!やっぱり人型は良いわねぇ」


私の生まれた時からのストーカーであるこの女神が最も力を増す時だからだ。


「アルテミシア。いい加減諦めて他の人間に憑く気はないの?」


綺麗な銀色の髪。金色の瞳。神秘的な筈なのにこの女神は子供のようにむくれた。


「やーよ!ディアナ以上に私と波長の合う人間なんてこの世界何処探しても居ないんだから!」


割と絶望する情報だった。この世界の女神が言うのだから、実際そうなのだろう。でも私は聖女になりたくない!!


「この国では転生者ってだけで爆弾抱えて生まれたようなものなのに、その上聖女?搾取される未来が手に取るようだわ」


そう、この国では輪廻転生が神聖化されていて、尚且つ異世界転生者ともなると王族が手ぐすね引いて待っているのだ。

私は王族に興味は無い。聖女にだって興味無い。出来る事ならこのまま平穏無事に幼馴染兼婚約者であるヘリオスと結婚したいのである。切実に。


「でもぉ、ディアナなら王族だって簡単には手を出せない程の力があるんだよ?」

「夜だけね!!」


つまり、昼の間の私は一般市民と変わらないのだ。そこを捕らえられたら…まぁ、普通に夜逃げ出すけど。


「だってあのサエって子、すっごくディアナに突っかかって来て私もうプンプンなんだよ!?」


プンプンて。何歳だ。貴女女神でしょうが。威厳ってものを大切にした方が良いわよ?本当に。信仰心とか大事なんじゃないの?


「あの子、異世界転移して来たみたいだから何か勘違いしてるんだと思うんだよね」


あくまでこの国が信仰してるのは輪廻転生であって超常現象では無いんだよね。

でもロキシー王太子殿下も何か便乗しちゃおうかな、みたいな雰囲気あるのよねぇ。

異世界転生者が見つからないなら、近しい者の事実をねじ曲げてしまえ、的な?


「まぁ私があの王太子殿下に見つからないのが一番なので。婚約者が居るのに他の女性に粉かけるような男と結婚するくらいなら国捨てるわ」

「でもでもその婚約者もディアナの事貶してくるじゃん!もう私我慢の限界だよ!」

「レイシース様も大変なんだよ。あんなのが婚約者で。しかも浮気相手がアレで。だから我慢して。頼むから」

「ふんっ!夜に学園の授業が無いのを皆ありがたく思う事ね」

「明日の夜会、大人しくしててよね」

「皆が良い子にしてればね!!」


明日は学園卒業後に夜会が開かれる。

私は当然ヘリオスにエスコートしてもらうけれど、本当に大丈夫だろうか。


前世でありがちだった悪役令嬢断罪とかあの二人が始めなければ良いんだけど…。




翌日、卒業式はつつがなく終わり、ヘリオスの瞳の色のサファイアのネックレスとイヤリングを着けて、ヘリオスに贈られたドレスを身に纏い、彼が迎えに来るのを待つ。


「ディアナ!やっぱりよく似合う!世界一綺麗だ!」

「ありがとう。ヘリオスも素敵よ。アメジストのネクタイピン使ってくれたのね。嬉しいわ」

「君の瞳の色を身に纏えるなんて光栄だよ」

「私も。でもちょっと恥ずかしいわね、私のものよ、ってアピールしてるみたいで」

「私は君のものだよ。でも君も私のものだからね」


馬車に乗ると、アルテミシアが姿を現した。


「ディアナ、立派になって」

「ちょっとそれどう言う目線なの?」

「お母さん?」

「遠慮しとく」

「アルテミシア様、実は今日、ちょっと一騒動ありそうなんです」

「まぁ、腕が鳴るわね!」

「いえ、なるべく見守っていていただけると」

「えー」


やっぱりこんな手のかかる女神がお母さんなんて嫌だ。


「それでディアナ」

「なぁに?」

「騒動が起きても、奇跡の力は限界まで使わないでくれ」

「あら、願ったり叶ったりだわ」


私が聖女っぽい存在だと知っているのはこの世界でアルテミシアとヘリオスだけだ。

奇跡の力を使わないでくれと言ってくれるヘリオスだから、私は今まで普通の侯爵令嬢で居られた。

ヘリオスは私に力を使わせない為に様々な努力をしてきてくれた。

私もヘリオスに見合う女性でありたい。


「でも、もし…貴方に危険が及んだら私はきっと約束を破るわよ」


そう。ヘリオスを失ってまで守りたいものなど無いのだから。


「気をつけるよ」


会場に着いて、アルテミシアは姿を消してついてくる。

私達も友人に一通り挨拶をしていると、会場の中央が騒がしくなってきた。


「レイシース、君は異世界から来たサエを擁護するどころか虐めていたそうじゃないか」


うわ、本当に婚約者断罪しようとしてるの?この王太子馬鹿なの?


私がヘリオスを見上げると、ヘリオスは少し諦めた顔で首を小さく横に振った。


「ロキシー様、私、もうレイシース様が怖くて…!」

「サエ、もう大丈夫だ。僕が君を守る。レイシース、今この時をもって君との婚約を破棄する!」


やっぱり馬鹿だ…。これから陛下もいらっしゃると言うのに王命で決められた婚約者を勝手に断罪して婚約破棄までするなんて。これはちょっとまずいのでは…。


「ねぇディアナ。もし私が困っていたら、助けてくれる?」


突然のヘリオスの問いに私は首を傾げる。


「えぇ、それは当たり前だけど」

「君が嫌がる事をしなきゃいけなくても?」

「貴方を失う事より耐えられない事なんて無いわ」

「ありがとう。でもやっぱり先に謝っておくよ、ごめんね」


私達が会話している内にあちらは陛下が到着し、更に揉めている。


「陛下!サエは異世界人です!きっとこの国に祝福をもたらしてくれます!!」

「あの、私の知識が役に立つなら、私頑張ります!」


だから、そう言う事じゃないんだよ。確かに近年は転生者の知識を当てにしたりする事が主になってきたけれど、本当は違うの。


そしてその本来の恩恵を受けるには、転生者じゃなくて、転移者の貴女には不可能な事なのよ。


まぁそれを正しく知っているのがこの場に何人居るのかわからないけれど。


「……埒が開かない。ヘリオスは居るか」

「はい、此処に」


ヘリオスが聞いた事もない様な硬い声を出した。


「この通りだ。ロキシーは使い物にならん。廃嫡にする」

「ち、父上!?」

「もうお前に父と呼ばれる義理は無い。その異世界人と好きに生きるが良い。断種はするがな」

「そんな……」

「何でですか!私、ちゃんと異世界の知識有ります!きっとお役に立ってみせますから!」

「もう良い。ヘリオス」


ヘリオスのお義父様は陛下の弟君だ。そして今男系王族は、四人しか居ない。


そしてヘリオスが陛下に呼ばれた。つまりは、きっと、そう言う事で。


「お前がレイシース嬢と結婚して王家を継げ」

「陛下…」


きっと今ヘリオスは悩んでいる。私が普通を恋しがっていたのを彼は誰よりも知っているから。

だから私を巻き込みたくなくて、困っている。

全く、約束したじゃない。貴方が困ったら、私がきっと助けるって。


「恐れ入ります陛下。発言の許可を頂きたく」


あぁそんな泣きそうな顔をしないで。こんな事、なんて事ないわ。貴方を誰かに取られてしまう事に比べたら。


「なんだ」

「私がヘリオス様のお相手では駄目でしょうか。私は、正しく理解しております。王家に転生者が入る理由を」


陛下が人が悪い顔で笑う。


「申してみよ」

「転生者だけが、生まれ変わりの場でこの世界の神と会う事が許されるからです」


陛下が目を見張る。流石にこの国の王様。知っていたか。


「本来なら良き日になる筈だった今日。私から皆様に細やかながら祝福を」


私が夜空がある天井を指差すと、アルテミシアが心得た!とばかりに皆にほんの少しの祝福を授けた。


「どうでしょう陛下。私ではヘリオス様に不足でしょうか」


この祝福は、個人個人によって発現する内容は異なる。そして何が発現したかはその本人にしか分からない。

これで足りないと言われたら南の砂漠との境からモンスターが入って来ないよう結界でも張らなければならないだろうか。

いいえ、王妃になればいずれ、必ずやらなければならない事の一つだわね。


私とヘリオスを交互に見た後、陛下は機嫌が良さそうに大きく笑った。


「なんだ。お前が最初から当たりを捕まえておったのか」

「私がディアナを愛したのはディアナが聖女だからではありませんよ」

「そうだろうな。宝物を隠し通せず、残念だったな」

「本当に」


陛下はロキシー様を見る。ロキシー様は悔しそうに顔を歪めていた。


「お前は離宮に謹慎せよ。改心すれば断種は免除してやろう」


その心の変化は祝福によるものだろうか?

私は陛下ではないのでわからないけれど、ロキシー様の顔も、少しだけ、落ち着いた様に見える。


「私はどうなるんですか!?この世界で頼れる人なんてもう居ないのに!!」


サエ様の声に、私はヘリオスとアルテミシアを見る。

二人共一つ頷いた。

私はサエ様に近付く事もなく、声をかける。


「この世界の迷い子になった事、女神の代わりに謝罪しますわ。どうかお元気で」

「な、なに!?」


今夜が満月で良かった。そうじゃなければ異世界を渡らせるなんて事、到底出来なかった。


「レイシース嬢、今まで迷惑をかけたな。慰謝料はきちんと王室から払う。すまなかったな」

「新しい婚約者殿を貰い損ねてしまいました」

「すみませんサランベル公爵令嬢。私にはディアナ以外考えられないのです」

「そうでしょうね。大人しく引き下がりますわ。私も、聖女様には敵いませんもの」


私は、聖女になりたくなかった聖女で。

これから学ぶべき事もやらなければならない事も沢山あるのだろうけれど。


こうして微笑むヘリオスの隣を誰にも譲らずに済んだのだから、あの日私に声をかけてくれてアルテミシアに感謝しないといけないわね。



『ねぇねぇお嬢さん!ちょっとこの世界で聖女やってみない!?』



今思い返しても下手なナンパみたいだけれど。




元々根が真面目なディアナはこれから真摯に王太子妃教育と聖女活動に励みます。夜限定聖女ですが。

読んでいただきありがとうございました。

いつも評価、ブクマ、リアクションなどありがとうございます。とても励みになります。

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