第六十九話 消えゆく仲間
残された一本の道を、翔太・リィナ・ミンミン・アイリの四人は慎重に歩を進めていた。
イーヴァンもジルクもいない。
洞窟は不気味なほど静かで、足音だけが乾いた岩の壁に反響する。
しばらく進むと――またもや行き止まりだった。
「……またか」
翔太がつぶやく。
リィナは矢をつがえたまま周囲を警戒し、アイリは光球を広げる。
しかし、何も起きない。
床も壁も、さきほどのように仕掛けてくる気配がない。
「何も無い……逆に気持ち悪いな」
ミンミンが背中を丸める。
引き返すしかない。
翔太たちは別の分岐へ向かうため、静かに歩き始めた。
――そのときだった。
「……ミンミン?」
リィナが振り返る。
誰もいない。
「え? うそ……さっきまでいたよね?」
アイリの声が震えた。
翔太は即座に周囲を走って確認するが、気配すら消えている。
「ミンミンも……連れていかれたのか」
その言葉を口にすると、胸が重く沈んだ。
だが立ち止まるわけにもいかない。
助ける方法は前に進むしかないと、洞窟が告げているようだった。
「行こう。焦っても仕方ない」
翔太は短く言い、歩く。
リィナとアイリもうなずいた。
再び進むと、広い空間へとたどり着いた。
そこには岩壁に埋め込まれたような、古い石造りの扉が一つだけ存在していた。
「……あからさまに怪しいわね」
リィナが矢先で扉を指す。
翔太が手を伸ばす。
その瞬間――
「リィナッ!!」
バシュッ、と空気が歪み、リィナの身体が壁に吸い込まれたように消えた。
見開かれた瞳、伸ばされた手。
その残像だけが翔太の網膜に焼きつく。
「そんな……リィナまで……!」
アイリがその場に立ち尽くす。
翔太は歯を食いしばり、無理にでも声を出した。
「……大丈夫。絶対に助ける。みんな、必ず……」
アイリはうなずくが、肩が震えていた。
翔太は扉の前に立ち、深呼吸をひとつ。
(行くしかない……。)
そして――扉を押し開けた。
ギギギ、と重い音が洞窟に響く。
中は天井が高く、闘技場のように広がる空間だった。
中央に、黒い殺気をまとった “人型の影”が、まるで待ち伏せていたかのように仁王立ちしていた。
「……来たな、紋章を持つ者よ!
THE・試練其ノ三―――かかってくるがよい」
かすれた声が空気を震わせる。
翔太は弓を構えた。
魔物は歩み出す。
その動きは遅い。
しかし、一歩進むたびに地面が揺れ、岩盤が砕けた。
――力だけは、桁違い。
「スピードは……遅い。なら……!」
翔太は素早く横へ跳び、距離を取りながら矢を放つ。
だが。
「ガキィン!!」
弓矢は魔物の腕に触れた瞬間、弾かれた。
(硬い……!)
間髪入れず、魔物の腕が唸りを上げる。
「ドンッ!!」
岩の壁が拳一つで粉砕された。
翔太は冷たい汗を流しながら後退する。
「避けるしか……ないっ!」
魔物が迫る。
その巨体から繰り出される攻撃は、遅いが一撃一撃が致命的だった。
翔太が回避を重視しながら距離を取り、弱点を探す。
――が、見つからない。
その瞬間、翔太の右手が疼き、黒い紋章が熱を帯びた。
(……やるしかない)
翔太の決意と同時に、右腕が変形を始める。
剣のような形状に変わり、黒い光を帯びた。
「来い……!」
翔太は地を蹴り、真正面から魔物へ向かった。
「アイリ!援護を頼む…………!?」
だが、そこにアイリの姿は無かった。
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次回、第七十話 孤独なる戦場




