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第六十八話 最後の試練

 二つ並ぶ洞窟のうち、まずは近い方へと足を踏み入れた。

湿った空気が流れ込み、岩肌に白い靄が貼りつく。


 「……おかしいな」


 アイリが立ち止まり、目を細めた。

彼女は手を前にかざし、小さく息を吐く。

霧の魔法――薄い白煙が洞窟の奥へと広がり、ゆらりと形をゆがめた。


 「反応が薄い……この洞窟じゃない!」


 その結果を受け、翔太たちは引き返す。

次は、遠くに位置するもう一方の洞窟へ。


 その道中――。

黒い魔物たちが、じりじりと森影から現れた。


 「来たな……!」


 ミンミンが蹴りで、刃のように風を切る。

ジルクの鉄槌が空を割り、リィナの矢が風を裂き、イーヴァンが黒い軌跡を描く。

魔物たちは為す術もなく吹き飛び、消えていった。

中間たちは確実に強くなっていた。


 「時間を取られてる場合じゃない。急ごう!」


アイリの言葉に、全員が力強くうなずく。


 そして――辿り着いた。

二つ目の洞窟。

入口から漂う空気は、まるで別物だった。

アイリは再び霧の魔法を放つ。

霧は洞窟の奥へ吸い込まれ、光のように瞬く。


 「……ここだ!ここが試練の洞窟だ。間違いない!」


 言葉に迷いはなかった。

翔太たちは、慎重にその中へと歩を進める。


 洞窟の内部は、異様なほど複雑に枝分かれしていた。

何本もの道が闇の奥へと続き、その全てが不気味な静けさに包まれている。


 「光で確認できるのは……俺の魔法だけか…」


アイリが光球を浮かべる。


 「二手に分かれた方が早いけど……」


とミンミン。


しかし翔太は首を横に振った。


 「いや…いつもの洞窟より薄暗い。光があった方がいい。全員で行こう!」


 全員も、その判断に従った。

だが、その判断をあざ笑うように、魔物たちが次々と姿を現す。


 「またっ……!」


 イーヴァンが斬り伏せ、翔太が矢を射る。

気配は強まっていくが、進む足は止めない。


 しばらく進み、辿り着いたのは――

不自然なほど広い空間。

行き止まりだ。


 「行き止まり? いや、違う……っ!」


リィナが叫ぶと同時。

ガコン、と床板が沈み――


 「――イーヴァン!!」


 底に穴が開いた。

イーヴァンの足元が崩れ、彼女の身体が一気に沈んでいく。

伸ばした翔太の手は、虚しく空を掴んだ。


 「大丈夫! なんとかするわ!」


 遠ざかりながら、イーヴァンの声が響く。

しかし、その先の光景は見えない。


 「追いかけられない……道もない……」


 リィナの歯がきしむ。

翔太は、悔しさを押し殺しながら言った。


 「……別の道を探そう。必ず合流できるはずだ」


振り返り、再び洞窟の分岐へ戻る。


 だが、異変は続いた。

一定の距離を進むと、魔物の気配が――

ぱったりと消えたのだ。


 「嫌な静けさだね……」


 ミンミンが震える声でつぶやく。

そして、またも行き止まりに到着する。


 「アイリ、何か――」


ジルクの言葉は最後まで続かなかった。


 「ヒュルッ――」


天井から、黒い植物の枝が伸びてきた。


 「ぐっ……!!」


 ジルクの胴を一瞬で締め上げ、そのまま上へと引き上げる。

翔太が手を伸ばすも、ジルクの姿は闇に飲まれ――消えた。


 「ジルクッ!!」


 叫びが虚空(きょくう)に吸い込まれる。

翔太たちは、その場に立ち尽くすしかなかった。


 「……分断が目的か」


リィナの声には怒りよりも、冷静な予感が混じる。


 「でも、立ち止まってるわけにはいかない」


翔太は拳を握った。


 「必ず合流出来る!今は進むしかない……!」


仲間を二人も奪われた痛みを抱えながらも、翔太たちは顔を上げた。


 そして――

残された道へと、再び歩き出した。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第六十九話 消えゆく仲間

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