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第六十七話 試練の集い

  夜の空気がゆっくりと冷えていく。

 村外れの古い建物――翔太たちの仮拠点は静かだった。

 二つの月は重なり、光が窓を照らす。


(……もうすぐ、試練が始まる)


 翔太は深呼吸し、一階へ降りる階段に向かった。


  階下では、ジルクとミンミンが静かに待っていた。

 ジルクは窓にもたれ、ミンミンは緊張からか指を何度も組み直している。


 「……しょうた。大丈夫……?」


 「ああ。行こう、最後の試練に。皆、準備はいいか?」


  ミンミンがこくこくと頷く。

 ジルクも無言のまま席を立った。

 その瞬間――部屋の中央に柔らかい光の魔法陣が展開する。


 「転移魔法……!」


  ミンミンが目を丸くする。

 光の中から現れたのはフェアリス。そして、その後ろにはリィナの姿があった。


 「待ってたよ。来てくれて、ありがとう!」


 リィナは軽く手を上げて言う。


 「……嫌な気配がしたのよ。そろそろだと思って。

 フェアリスに頼んで連れてきてもらったわ」


 フェアリスはにっこり笑い、翔太に視線を向ける。


 「これで皆そろったね。じゃ、あとは任せるよ。

 私は……帰るけど、無事を祈ってるわ」


  彼女は軽やかに手を振ると、再び光に包まれ、姿を消した。

 残ったのは――翔太、イーヴァン、リィナ、ジルク、ミンミン。

 静かな緊張が建物の空気を満たす。


(言わなきゃいけない……隠したまま進むわけには、いかない)


 翔太は皆の前に立ち、深く息を吸った。


 「……まず、伝えたいことがある」


  三人が真剣な顔になる。

 イーヴァンは不安そうに翔太を見つめた。


 「俺が……最初に助けたいと思った人。

 俺が“願い”を捧げた相手は――」


  言葉が喉に引っかかる。

 しかし、今はもう逃げない。


 「――イーヴァンだったんだ」


 皆の目が見開かれた。


 「えっ……イーヴァン……が……?」


  ミンミンがぽかんと口を開ける。

 リィナは信じられないという目でイーヴァンを見た。


 「本当に……アンタが翔太の助けたかった相手……?

どういうこと!?」


  ジルクもわずかに眉を動かしただけだったが、その目には深い驚きが宿っていた。

 イーヴァンは視線を逸らし、喉をつまらせながらも、

戻った記憶の話をした。

 イーヴァンが話し終えた後も翔太は続ける。


 「試練を受けたら、俺は――記憶を全部失くすかもしれない。

 みんなのことも、イーヴァンのことも……助けたいと思った理由すら」


 ミンミンが胸の前でぎゅっと手を握る。


 「そんな……なら、試練を受けなくても……」


 「俺も……本当は、試練をやめようと思った。

 でも……そうもいかない理由ができた」


 「理由?」


 リィナが鋭く問い返す。


 「……ごめん。今は言えない。でも、必ず意味がある」


  三人は顔を見合わせた。

 だが――誰も否定しなかった。

 リィナが息を吐き、肩をすくめる。


 「……翔太が言えないっていうなら、今は信じるしかないわね。

 アンタのその顔見てれば……本気だって分かるもの」


 ミンミンは涙をぬぐって頷く。


 「しょうた……信じるよ。ずっと一緒に戦ってきた仲間だから!」


 ジルクが短く言う。


 「道を選んだのなら……オイは一緒に戦うまで」


 あたたかい言葉が、翔太の胸に重く響いた。


 「……ありがとう。みんな。本当に…」


 「それで……チロルの光は何処を指してる?」


 リィナが尋ねる。


 「それなんだけど……ちょっと、変なんだ」


 ジルクは窓を覗き込むチロルに視線を向けた。

 

 「光の柱が二つ見えるの……」


 チロルが難しい顔をして答える。


 「さっきから、何回も確かめてるんだけど……」


 「どういうことだ……!?」


翔太は動揺を隠せずにいた。


 「ニャー」


そこに、白猫の姿をしたアイリが突然現れる。


 「……それは、多分だけど、時空の歪みのせいじゃないかな」


 「……時空の歪み!?」


 「本来、一つしかないものが、二つに見える。

そういう現象が起きたことは、前にもあった。

大丈夫。俺が何とかしてみる。試してみたいことがあるんだ。

時間が無い。急いで出発しょう!」


 一同は静かに頷き、それぞれ武器を手に取った。


  重なる二つの月。そして、洞窟を指す二つの光。

 最後の試練へ――

 運命を裂く戦いへ向かって、翔太たちは歩き出した。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第六十八話 最後の試練


物語は最終段階に向かってます。

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