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第六十話 最強の器

   ドーリン城下町の中心。

 黒い霧が渦巻く中、翔太たち三人はドルトン(フェアリスの体)と対峙していた。


 「フェアリスを返してもらう!」


 翔太が叫ぶ。しかし、ドルトンは嘲笑(ちょうしょう)を返すだけだった。


 「返す? 返すわけがなかろう。

この体は私のものだ。二度と元には戻らぬ」


  その瞬間――風が刺すように吹いた。

 ドルトンの身体から、尋常ではない魔力が噴き上がったのだ。


 「――ッ! 来るよ!」


  リィナが叫び、翔太は瞬時に呪いの刃を構える。

 だが――遅かった。


 「散れ」


  ドルトンが指を軽く振ると、地面がえぐれ、空気が爆ぜた。

 翔太の身体が吹き飛ばされ、建物に叩きつけられる。


 「ぐっ……ああぁっ!」


 「翔太!―――大丈夫!?」


  リィナが駆け寄るが、その頭上に影が落ちた。

 ――フェアリスの顔をしたドルトンが、笑っている。


 「三人ごときで私に勝てると思ったのか」


 「……そんな……強すぎる……」


  リィナの足が震える。

 アイリも歯を食いしばりながら呟いた。


 「……この魔力……フェアリスの本来の力……か。

冗談じゃないね……こんなの、私だって――」


 次の瞬間、ドルトンが高く跳び、三人に向かって黒霧を叩きつけた。


 「消え失せろォ!」


 「翔太、下がって!」


  リィナが翔太を抱えるように避けるが、黒霧は大地を抉り、逃げ場を奪う。

 完全な力の差――

 勝てないと、誰の目にも分かった。


 「……くそ……まだ……フェアリスを……助けたいのに……っ」


 翔太の拳が震える。


 「逃がすと思うか、小僧」


 黒い鎖が地面からせり上がり、三人を囲んだ。


  その瞬間――

 アイリが一歩前に出た。


 「……あなたたち!……そこから動かないで!」


 「え……?」


 「アイリ……?」


 アイリの初めて見る、真剣な眼差し。

 

 「いいから……動くな!皆やられるぞ!」


 白霧が舞い上がった。


 「――《霧壁〈フォグ・ヴェール〉》!」


  白い魔力の霧が爆発し、周囲を完全に覆い隠す。

 視界が、一瞬でゼロになった。


 「視界を……遮った!?」


 翔太の声が震える。


 「《風の波〈ウィンド・ウェーブ〉》!」


 続けざまに風の奔流が吹き荒れ、翔太とリィナの体が強制的に後方へ押し飛ばされる。


 「アイリ!? やめろ!!」


 「自分を犠牲にするなんて――!」


 翔太とリィナの叫びは霧に呑まれた。

 

 「犠牲?まさか。俺一人なら、どうとでも逃げられる」


  アイリは、杖にまたがり飛び立とうした瞬間、

 ドルトンの視界が晴れる。

 

 「ちっ……小賢しい真似を」


 「あっ!?……ふん。あんたを倒すのに三人もいらない!

俺一人で充分だ!」


  逃げ損ねたアイリは胸を張り、強がって見せた。

 恐怖を押し殺した気丈な表情?

 だが――


 「面白い。お前は使える……いい器になりそうだ」


 黒鎖が伸び、アイリの身体を絡め取る。


 「う……っ……!」


 「大人しくしろ。抵抗すれば手足をもぎ落としてやるぞ」


  冷たい声。

 アイリの体は浮かび上がり、ドルトンの背後へ引き寄せられる。


 「触るな……このっ……!」


 「無駄だ。

お前には――実験台になってもらう」


  黒い霧がアイリを包み込み、その姿はドーリン城の奥へと運ばれていった。

 白霧の森の魔女は――連れ去られた。

 

 「アイリィィィ!!」


  遠く離れた場所で、翔太の叫びがこだました。

 霧が晴れ、地面に倒れ込んだ二人は愕然とした表情で立ち上がる。


 「なんで……でも、あのままだと全員やられてた……!」


 「アイリ……!」

 

 翔太は拳を握りしめ、自分の弱さを噛み締める。



―――村に戻ると、イーヴァンが出迎えた。


 「お帰り……どうだった?森の魔女……」


 翔太は顔を上げた。


 「あぁ……見つけた。フェアリス救出に協力してくれることになって

……ただ、帰り道にドルトンに遭遇して、自分をおとりに俺たちを逃がしてくれた…」


 「えぇーーっ!?」


ミンミンは唖然としながら、翔太を見つめる。


 「……まだ間に合うかもしれない! みんな一緒に来てくれ……!」


 仲間たちは即座に頷く。


 「早くしなきゃ……!」

 

  翔太たちは――ドーリン城下町に向かう。

 アイリを救うため。

 フェアリスを解放するため。

 中間と共に、ドルトンとの決戦が、始まろうとしていた。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第六十一話 霧の脱出

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