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第五十七話 崩れる城下の真実

  ――石壁が震えていた。

 翔太とルイドは、薄暗い通路を駆け抜けながら、胸の奥の不安を振り払うように息を切らしていた。


 「この先だ……確かに俺を呼ぶ声が聞こえた!」


 翔太が拳を握りながら呟く。


 「仲間が……城の中にいるんだ」


  二人は駆け足で巨大な扉にたどり着いた。

 だが、翔太は足を止めた瞬間――鼻をつく鉄臭さに息を呑む。


 「……血?」


  扉の隙間から、赤い液体がじわりと染み出していた。

 翔太が震える手で扉を押し開ける。

 そこにあったのは、床一面の血痕。そして――魔物になりかけの、無惨に崩れた死体の数々。


 「こ……これは……」


 「ドルトン……魔物を作るために……人を拉致して、実験しておったんじゃ…」


 ルイドの声が震えていた。


 「……確かに仲間の声が聞こえたはずなんだけど……」


翔太たちは、ひとまず、外の方へ進みだした。



 ―――その、少し前―――


 部屋の中央――壁が寸前で止まった装置の部屋で、リィナとイーヴァンは、ドルトンの部下に捕まっていた。ジルクとミンミンもまた、ドルトンの催眠魔法で眠らされていた。

 数分のうちに彼らは拘束され、城の外へ連れ出された。



  翔太とルイドが城の外へ出ると、そこには、ありえない光景が広がっていた。

 仲間たち全員が、城前の広場で十字架のような木に縛られ、鎖で吊るされていた。

 リィナ、イーヴァン、ジルク、ミンミン――皆が傷だらけだ。


 「翔太……!」


  リィナの声は弱々しく、それでいて必死だった。

 翔太は飛び出そうとするが――


 「動くな!」


   背後から兵士が何人も現れ、一斉に剣を向ける。

 翔太は歯を食いしばり、拳を握った。


 「……くそっ!」

 

 「やっと来ましたか、呪われし者よ」


 城門の上に立つ男――ドルトンが、芝居がかった口調で広場に響く声をあげた。


 「皆さん、聞いてください! レーベル村に魔物を送り込んだのは――この者たちです!」


   その瞬間。

 ぞろぞろと、城下町の人々が押し寄せてきた。

 目はどこか虚ろで、怒気に満ちていた。


 「こいつらが……レーベル村を滅ぼそうとしてたんだろ!」


 「殺せ! 殺して償わせろ!」


 結界に操られた民衆の叫びが、四方八方から浴びせられる。


 「ち、違う! 俺たちは――!」


 翔太が叫んでも、誰も聞こうとしない。


 「まずは……お前からだ」


   ドルトンが指をさす。

 部下が剣を抜き、イーヴァンの胸元へ向けて振りかぶった。


 「イーヴァン!!」


   翔太は瞬時に左手に力を込め――光が迸る。

 ――《瞬間転移》。

 次の瞬間にはイーヴァンの前に飛び込み、剣を肩で受け止めていた。


 「うあっ……!」


 刃が深々と肩に突き刺さる。


 「翔太!!」


 仲間たちが叫んだ。


 「こいつ…ダイチの力を……!?」


 ドルトンは困惑しながらも、冷静な目で翔太を見る。

 翔太は倒れながらも、必死にイーヴァンを庇うように抱き寄せる。


 「翔太……どうして……!」


 「仲間を……死なせるわけにはいかない……!」


 イーヴァンの目が大きく揺れた。

 その瞬間――。


 「――解除できたわ!!」


   城の上空に巨大な光の柱が立ち上がり、青白い波動が一気に広がった。

 フェアリスだった。

 結界が砕け散り、民衆の瞳から虚ろさが消えていく。


 「え……私……今まで……?」


 「どうしてあんなことを……」


  人々が戸惑い、ざわめき始める。

 そのとき――


 「見せるぞ……民よ……奴の罪を!」


   ルイドが前に出て、両手で輪を作る。

 光が広がり、空中に巨大な映像が浮かび上がった。

 ――魔物生成装置。

 ――血まみれの犠牲者たち。

 ――ドルトンの実験記録。

 人々は息を呑んだ。


 「ド、ドルトン様が……?」


 「嘘だろ……ドルトン様が魔物を……?」


 ドルトンの顔が怒りで赤く染まった。


 「……ちっ、余計なことを!」


 次の瞬間――。


 「出でよ、我が眷属たちよ!!」


  地面から無数の魔物が湧き上がる。

 だが――


 「――《天星滅陣》!!」


   フェアリスが魔力を振り絞り、巨大な白光の魔法陣を展開した。

 光の奔流(ほんりゅう)が魔物の群れを一掃する。


 「……はぁ……っ……もう……魔力が……」


  フェアリスは膝をついた。

 翔太がなんとか起き上がり、仲間の鎖を外し始める。


 「くそっ……ドルトン!!」


 怒号をあげる翔太の前で、ドルトンは不気味に笑った。


 「仕方ありませんね……こうなれば――全員殺すのみ!」


   その身体が黒く膨れ上がり、巨大な魔物へと変貌する。

 イーヴァンが剣を握りしめて飛びかかるが――


 「どけぇぇ!!」


  ドルトンの一撃で簡単に吹き飛ばされた。

 ミンミンの蹴りも通らない。

 ジルクの鉄槌も弾かれる。

 リィナの矢はかすりもしない。

 仲間たちが次々と倒れていく。


 「翔太……! 治癒を……!」


 フェアリスが震える手で翔太を回復し、魔力を使い果たして崩れ落ちた。


 「ありがとう……フェアリス」


   翔太はゆっくりと立ち上がった。

 右手の呪いが黒い炎となって噴き出し、左手の光が彼を包む。


 「……行くぞ」


   翔太の身体が変化していく。

 ――半魔の姿。

 翔太は地を蹴り、雷のような速度でドルトンに迫った。


 「ぐ、う……!?」


   初めて、ドルトンが押される。

 仲間たちが倒れた先で、翔太はドルトンを掴み上げた。


 「みんな……準備は……いいか!」


   翔太が叫ぶ。

 ジルクは鉄槌を、リィナは弓を、ミンミンは蹴りの構えを、イーヴァンは剣を。

 そして――翔太はドルトンを瞬間移動で仲間の待ち構える地点へと叩き落とした。


 「いけぇぇぇ!!」


   仲間全員の奥義が炸裂し、凄まじい光が爆ぜた。

 世界が白く染まり――

 ドルトンの絶叫が、空へと消えていった。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第五十八話 魂の行方

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