第四十六話 月影の誓い
――夜明け前、空は群青と紫が溶け合うように揺れていた。
翔太はゆっくりと立ち上がり、窓辺に寄る。
身体の痛みはまだ残っていたが、不思議と心は穏やかだった。
――その頃、リィナは山を下り、再び村へ戻っていた。
彼女の足取りは早く、迷いはない。
翔太たちの元へ戻ると、ちょうどジルクとミンミンが帰還していたところだった。
「リィナ! 無事で良かった!」
「ああ。……でも、急いで伝えたいことがあるの」
リィナはルイドから聞いた話を皆に語る。
魔物を生み出しているのはドルトン。
そして、その暴走を止めるためにはドルトンがラウス王を抹殺したという事実を
民衆に気づいてもらうこと。
その為には、ドルトンの悪事を暴く必要がある。それが 出来るのは、フェアリスという賢者だけ。
「その人、どこにいるの?」
ミンミンが問う。
「レーベル村の南……海の向こう、ムーラン島。
おじいちゃんの顔見知りで、あらゆる魔法が使えるらしいよ」
翔太は静かに頷いた。
「つまり、その人を仲間にできれば、ドルトンの化けの皮を剥がすことが出来る……ってことか」
「ええ。でも、島までは数日の旅になるわ。月が重なるまでには戻ってこれない。
だから、あなたたちは先に“試練の扉”を探して……私が一人で行く。
戻るまで、死なないでよね」
リィナの冷たい口調の奥に、僅かな不安が滲んでいた。
翔太はその想いを受け取るように、軽く頷いた。
「ああ。俺たちは、もう誰も欠けることなく戦うつもりだ」
ミンミンの表情も険しくなり、チロルを抱きしめながら言った。
「リィナ、気をつけて。……あなたも、その一人なんだからね」
リィナは微かに笑い、背を向けた。
夜明けの風が彼女の髪を揺らす。
―――その夜。
翔太とイーヴァンは、村の外れの丘に立っていた。
空には、二つの月が静かに近づき、重なろうとしている。
「綺麗……でも、何か胸がざわつく」
「二つの月が重なる時、“試練の扉”が現れる。
「……たぶん、もうすぐだ。チロルが見た光、ここで間違いない」
そう言いながら、ジルクとミンミンが翔太の所へ向かってくる。
空の輝きが強くなり、地面が微かに震える。
翔太は弓を握り、風に髪をなびかせながら呟いた。
「――みんなの想いを、この手に」
イーヴァンはその隣で、小さく祈るように目を閉じた。
“試練の扉”が、再び姿を現す時が来た。
翔太とイーヴァンは静かに頷き合い、歩き出した。
リィナのいない中で始まる、新たな試練へ――。
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次回、第四十七話 試練の洞窟




