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第四十三話 再会

  温泉での休息から数日。

 二つの月がまだ遠く離れた夜、翔太たちは村の掲示板に貼られた討伐依頼を目にした。


「レーベル北の森に、異常な魔力を放つ魔物が現れた」

 依頼書を読んだジルクが腕を組む。


「……いい機会だ。身体を慣らしておくのも悪くない」


 リィナが頷いた。


「次の試練がいつ来るか分からないしね」


 翔太たちは久しぶりに、全員での依頼に向かうことになった。



  ーーー森の中は、冷たい霧に包まれていた。

 木々の間から覗く目が、無数に光る。


「……来るぞ!」


  翔太の声と同時に、巨大な獣型の魔物が飛び出した。

 ジルクの鉄槌が唸り、リィナの矢が闇を裂く。

 シーカの光弾が道を開き、ミンミンが素早く回り込む。


「せいっ!」


  ミンミンの拳が魔物の腹を貫いた。

 直後、ジルクがとどめを刺す。

 息を整える間もなく、翔太は周囲の気配に気づいた。


「……まだ、何かいる」


 森の奥から、黒い風が吹いた。

 腐食した木々が音もなく崩れ、空気が変わる。


「――見つけた」


  声がした。

 そこに立っていたのは、魔物の姿に変わり果てたダイチだった。

 その両眼は紅く濁り、左手から黒煙が立ち上っている。


「ダイチ! ダイチなの……!?」


 シーカが叫ぶが、彼の耳には届かない。


「右手に紋章を持つ者とその仲間…殺す」


 低く、歪んだ声だった。


「違う! お願い、思い出して! 私よ…あなたの婚約者のシーカよ!」


 シーカが駆け寄ろうとする瞬間、闇の刃が彼女を切り裂いた。


「っ――!」


 鮮血が霧の中に舞った。


「シーカ!!」


  翔太が駆け寄るが、彼女は崩れ落ちた。

 ジルクがすぐに抱きとめる。


「まずい! 誰も回復できない……ジルク、村に連れて行ってくれ!

 リィナは先に行ってチロルを!」


 翔太が弓を構えた瞬間、ダイチの姿が掻き消えた。


「消えた!?」


  背後に冷たい風。

 振り返る間もなく、衝撃が翔太を襲った。

 ――瞬間移動。

 ダイチの呪いが、近距離を縫うように移動する力に変化していた。

 イーヴァンが剣を抜く。


「そんな力が……厄介ね!」


  ミンミンが蹴りを放つが空を切る。

 ダイチは霧のように消え、別の場所に現れる。

 連撃が続く。

 翔太たちは防戦一方だった。


 イーヴァンが息を切らしながら距離を取る。


「このままじゃ、持たない……!」


 次の瞬間、ダイチの刃が彼女の胸元を狙った。

 翔太は迷わず飛び込んだ。


「イーヴァンッ!」


 鋭い痛みと共に、彼の身体をダイチの手が貫く。

 胸の奥で、呪いが暴れた。

 黒い紋章が右腕に浮かび、翔太の瞳が紅く染まる。


「……悪いな、シーカ。こいつは、もうダイチじゃない!」


 翔太は低く呟く。


「動きは封じた……お前を…倒す!」


  半魔の力が爆発した。

 弓が形を変え、漆黒の剣に変化する。

 翔太とダイチの一撃がぶつかり合い、轟音が森を裂いた。

 光と闇が交錯する中、二人の影が揺れる。

 ――刹那。

 翔太の剣が、ダイチの胸を貫いた。

 同時に、ダイチの爪が翔太の脇腹を切り裂いた。


「がっ……!」


  翔太の膝が崩れる。

 ダイチも苦しげに息を吐いた。

 イーヴァンが駆け寄る。


「翔太! しっかりして!」


 翔太は苦しい息の中で、彼女の手を掴む。


「……ルシアを……連れてきてくれ。

 ダイチを……戻せるのは……きっと、あの人しか……」


 イーヴァンの瞳が震える。


「……分かった。すぐに行く!」



 ジルクはシーカを担ぎ、血を滲ませながら走る。


「死なせねぇ……絶対に!」



 リィナはチロルを呼びに先行する。


「チロル! 治癒魔法がいるの!」


 チロルを連れ、来た道を走る。




  ―――ミンミンは翔太の傍に膝をつき、拳を構えた。


「翔太、こいつは私が見張る。もう動くな!」


 翔太はかすかに笑った。


「……頼んだ」


  夜の森に、血と魔力の匂いが満ちていた。

 ダイチの身体から溢れる黒い霧が、やがて空へと立ち昇っていく。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第四十四話 月の輝き

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