表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/45

第四十話 崩落の戦場

  轟音が世界を裂いた。

 崖の地面が砕け、土砂と炎が入り混じる。翔太たちは宙を舞い、岩と共に奈落へと飲み込まれていった。


 「――くっ!」


  シーカは咄嗟に両手を広げ、防御結界を展開した。

 光が全員を包み込む。しかし、爆風と岩の衝撃は想像以上だった。


 「耐えて……! お願い、壊れないで!」


  結界が軋み、光が弾ける。

 次の瞬間、激しい衝撃と共に地面に叩きつけられた。


  ――しばらくして。

 粉塵(ふんじん)の中、かろうじて動けるのはシーカとジルクだけだった。

 翔太もリィナも、岩の下に埋もれている。イーヴァンの姿も見えない。


 「……っ、皆……無事でいて……」


 シーカがふらつきながら立ち上がる。その前に、黒い靴音が近づいた。


 「やっぱり、お前はしぶといね……。 シーカ」


 カイが微笑んでいた。その横では、ノインが冷たく笑う。


 「兄さん、やろうか」


 「ああ。まぁ、少しは片づいたかな。大勢いると、厄介だったからな。

 でも、生き残ってくれて、嬉しいよ。そのまま死んだら殺す楽しみがなくなる」


  言葉と同時に、黒い魔力が二人の掌に集まる。

 ジルクが前に出た。

 その手に、巨大な鉄槌を握りしめ。


 「……お前を、仲間だったと思っていた」


 カイは鼻で笑う。


 「仲間? 俺は最初から、お前らを仲間なんて思っちゃぁいない。

 どうやって殺してやるかばかり考えてたよ」


  轟音が走る。

 鉄槌と爆炎がぶつかり、地面が抉れた。

 しかし、カイの爆発魔法の威力は凄まじく、ジルクの腕が焼けただれる。


 「ジルク!」


 シーカが魔力を集めるが、背後にノインの影が迫った。


 「後ろがガラ空きだよ!」


  風を切る音。ノインの短剣が、シーカの頬を掠める。

 間一髪で防御魔法を展開したが、膝が震えていた。

 ――強い。速い。

 ノインの動きは、まるで風そのもの。


 「くっ……!」


  ノインが畳みかけようとしたその瞬間。

 高い岩の上から声が響いた。


 「―――なんか分らないけど、お前たちは悪い奴だな!」


  鮮やかな青の衣装――ミンミンだった。

 彼女はレーベル村に向かう道中で、翔太たちを見つけて後を追って来たのだ。


 「加勢する! 今度は私が助ける番だ!」


 ミンミンの旋風の様な回し蹴りが空に描かれる。雷光が走り、ノインを弾き飛ばした。


 「っぐ……!」


  ジルクがすかさず前に出る。

 彼の鉄槌が再びカイの攻撃を受け止め、ミンミンの蹴りがそれを援護する。


 「……こいつは、あの時の」


 カイが唇を歪める。


 「じゃあ、まとめて消し飛ばしてやる」


 魔力が爆発寸前に膨れ上がる――その時。


 「やらせない!」


  リィナの声が響いた。

 瓦礫がれきの中から、弓を引く彼女が現れる。

 背後では、シーカが魔法で翔太とイーヴァンを回復させていた。


 「翔太、イーヴァン! 今のうちに!」


  シーカの魔力が光を放ち、翔太の体が再び立ち上がる。

 イーヴァンの剣が黒く光を帯びた。

 翔太が叫ぶ。


 「カイ! お前を倒す!」


  その瞬間、カイの放った爆炎を、シーカが防御魔法で弾き返す。

 爆風が逆流し、カイの体を包んだ。


 「な……っ!」


  そこへ、翔太の弓とリィナの矢が同時に放たれる。

 閃光のような二条の矢が、カイの胸を貫いた。

 爆発の余波が収まった時――カイは膝をつき、血を吐いた。


 「……負けた……? 俺が……?」


 カイの視線が、ノインに向く。


 「兄さん……っ!」


 ノインが駆け寄ろうとするが、イーヴァンの剣がその前に立ちふさがる。


 「お前たちに……これ以上、好きにはさせない」


  ノインは顔を歪め、地を蹴った。

 ジルクの槌が振り下ろされるが、ノインは身を翻し、そのまま闇の中へ消えていった。


 「くっ……兄さん……!」


  その声を最後に、風だけが残った。

 シーカは崩れ落ちるように膝をつく。

 翔太はカイのもとに歩み寄った。


 「お前は間違ってる。人を殺すのを何とも思わないなんて……

 でも、一緒に居た時は間違いなく仲間だった……」


 カイはかすかに笑った。


 「……どこまで間抜けなんだ……だが、俺も少しは楽しかったぜ……

 まぁ、せいぜい頑張るんだな…………」


 そのまま、目を閉じた。


  炎の光が彼の周囲を照らし、やがて風に溶けるように消えていった。

 重たい沈黙が場を支配する

 崩れた崖の上空では、二つの月が徐々に近付き始めていた。


 ――次の試練が、静かに幕を開けようとしていた。


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第四十一話 黒き器


もし、面白いと思って頂ければ

感想など書いてくれると嬉しいです!

ブクマもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ