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第三十一話 集う者たち ―光の導き―

  薄暗い夜、明かりの灯る宿屋。

 レーベル村の空気は冷たく、遠くの森から不気味な風の音が聞こえていた。

 チロルはベッドの上で膝を抱え、じっと窓の外を見つめていた。


 「……お父さん、なんだか、光が見える」


 その声に、ジルクは顔を上げた。


 「光?」


 「うん、森の向こう。空がちょっとだけ、青く光ってるの」


  ジルクの表情が引き締まる。

 かつて“試練”が出現する前、シーカが同じことを言っていた。魔力量の濃い場所では、空気の色そのものが変わるのだ。


 「チロル、それは、“魔力の色”かもしれない」


 チロルは不思議そうに振り向く


 「……魔力の色? わかんないけど、あっちの山の空が一番、青く光って見えるの。」


 ジルクは立ち上がり、鉄槌を肩に担ぐ。


 「リィナ、出るぞ。方向はチロルが見た方角だ」


 「了解。チロルは宿で待ってて。危険かもしれないから」


 リィナが優しくチロルの頭を撫でた。


 「うん……気をつけてね」


  二人は夜の霧の中を歩き出した。

 森を抜けた先で、ジルクとリィナは見覚えのある人影を見つけた。


 「――ジルク!」


 声の主はシーカだった。その隣にはカイが立っている。


 「やはり。ここなんだな……試練というのが現れる場所は」


 シーカが頷く。


 「魔力量が異常に濃い。あの先に何かがある」

 カイが短く笑う。


 「肝心のやつがまだだけどな」


 「…それは、翔太のことか?」


 「そう、ルシアという人の所に行ってるわ。魔物の女を抱えてね…」


 ジルクには、思い当たる節があったが、それよりも先に伝えることがあった。


 「シーカ……伝えなきゃならんことがある」


 シーカが顔を上げると、ジルクは低く呟いた。 


 「ミナが……やられた」


  その言葉は、風よりも冷たく、静かに落ちた。

 シーカの瞳が一瞬にして揺らぐ。


 「……何ですって?」


 「カマルとトロイの仕業らしい。翔太も……見てた」


  カイが口笛を吹くのをやめ、空気が張りつめる。

 シーカは拳を握りしめ、唇を震わせた。


 「……そんな……いい子だったのに」


 リィナも弓を握り直す。


 「私は絶対ゆるさない! ミナの仇は必ずとる」


  ジルクは無言で頷いた。

 四人の間に、決意が流れる。



  一方その頃――ドーリン城。

 王の執務室を装う広間で、ドルトンはいらつき初めていた。


 「ふむ……イーヴァンが戻らない?」


 部下の報告に、ドルトンは微笑を消さなかった。


 「遅いな。あやつの力なら既に村の半分は崩れていてもおかしくないはず」


 「偵察を出しますか?」


部下が問う。


 「当然だ。……ふふ、なにか想定外のことが起きているのは確かだ。失敗なら、それでもいい。

 あやつの変わりはいるからな……次の“布石”を打つとしよう」


 その瞳は、冷たい蛇のように細められた。



  そして、二つの月が重なり始めたその時。

 宿屋の前に、一人の青年が戻ってきた。

 翔太だった。肩には疲労の色が濃く、目の奥には迷いと覚悟が混ざっている。


 「翔太!」


 チロルが、駆け寄る。


 「みんなは?」


 翔太はチロルから光の方角を聞くと、すぐさまに向かった。




 ――「翔太! 何とか間にあったわね」


 翔太は息を切らせながら、静かに頷いた。


 「……待たせた……イーヴァンはルシアに預けた。呪いが深くて、時間がかかるらしい」


 リィナ、ジルク、シーカ、カイが並び立つ。


 「月が、もうすぐ重なる。次の試練が近い。場所は――あの洞窟よ」


  チロルの“見た光”の方向と、シーカの“魔力量の色”が一致していた。

 翔太は弓の弦を確かめ、静かに息を吐く。


 「行こう。……試練の魔物は必ず倒す“」


  誰も言葉を返さなかった。

 ただ、全員の目が同じ方向を見ていた。

 夜風が吹き抜け、木々がざわめく。

 五人は互いに頷き合い、闇に包まれた洞窟へと足を踏み入れた。


 

読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第三十二話 リベンジ―試練の扉―

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