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第二十九話 帰郷の決意

  森の中を歩き続ける翔太の足取りは重かった。

 風が木々を揺らし、どこか遠くで鳥の声が響く。


  ――ミナを、見殺しにしてしまった。

 その言葉が、何度も頭をよぎる。

 彼女の笑顔。最後に伸ばした手。

 全てが、焼けつくように胸を締めつけた。


 「……戻るしか、ない」


  そう呟きながらも、足は止まりかける。

 仲間に合わせる顔がない。

 自分の力不足で、仲間を失った。

 それでも――帰らなければならない。

 やがて、見慣れた村の風景が広がった。 


  レーベル村。

 かつての安らぎの場所が、どこか冷たく見える。


 「翔太っ!」


  先に気づいたのはチロルだった。

 駆け寄ってくる小さな姿に、翔太は思わず目を逸らした。


 「どこ行ってたの!? みんな心配してたんだよ!」


 「……すまない」


  チロルの瞳が潤む。

 その後ろからリィナとジルクが歩いてきた。


 「……無事だったんだな」


 「ああ……」


  短い沈黙。

 その後、リィナが静かに口を開く。


 「今まで何処で何をしていたの?」


 翔太は拳を握りしめ、わずかにうつむいた。


 「……あの時、俺は呪いにのみこまれた。ミナを助けることも出来ずに……でも、ちゃんと話をしたくて、ここに戻って来たんだ」


 翔太は、一部始終をみんなに話した。



  ーーーその日の夕暮れ、翔太は村の外れにある丘へ向かった。

 そこには、ミナの墓が静かに(たたず)んでいる。

 草花が風に揺れ、二つの月が薄く照らしていた。


 「……ただいま、ミナ」


  翔太はそっと花を添える。

 ルシアに教わった呼吸法を思い出しながら、空を見上げた。


 「……ごめんっ。救ってあげられなくて……俺の力不足で。それでも、今まで一緒にいてくれて、本当にありがとう」


 風が吹いた。

 その瞬間、どこかで優しい声が聞こえた気がした。


  ――がんばって、翔太。


 涙が溢れ出てくる。

 翔太は目を閉じ、胸に手を当てた。



 ーーーその時、村の北方――王都ドーリンで、新たな陰謀が動き出していた。


 「見つけたわ、ドルトン様。あの女です」


  闇の中で報告するのはカマル。

 彼の前には、ボロボロになった一人の女剣士――イーヴァンが立っていた。


 「ほう…女の魔物か……」


 ドルトンはゆっくりと立ち上がり、冷たい笑みを浮かべる。


 「お前は利用価値がありそうだな」


 「利用……?」


  イーヴァンが剣を抜く。

 それを合図に、カマルが前に出た。


 「ふふ 私が相手してあげるわ」


  夜の廃墟で、二人の剣がぶつかる。

 カマルは笑いながら攻撃を仕掛けるが、次第に押されていく。


 「チッ……こいつ、速い!」


  イーヴァンの剣がカマルの頬をかすめる。

 その瞬間、背後から冷たい気配――ドルトンだ。


 「遊びは終わりだ」


  放たれた魔弾がイーヴァンの背中を撃ち抜いた。

 彼女は呻き声を上げ、そのまま倒れ込む。

 倒れたイーヴァンの髪を掴み、カマルが笑った。


 「どうする? 殺す?」


 「いや……使える。ハマイを呼べ」


  闇の奥から現れたのは、一人の女。人型の魔物。

 妖艶な微笑みを浮かべ、瞳が紫に光る。


 「呼んだ? ドルトン様」


  その声に、空気が凍る。

 彼女の名は――ハマイ。人の心を操る催眠魔法の使い手。


 「この女を“操り人形”に変えろ。レーベル村を襲わせる」


 「ふふ……了解」


  ハマイは唇を舐め、イーヴァンの額に指を当てる。

 紫の光が放たれ、彼女の瞳が(にご)っていった。


 「王都の食糧庫、放出の準備を。


  ドルトンの命令が響く。

 部下たちが次々に動き出す。


 「村を半分“失わせ”た後で救えば、民は俺を崇める。

 愚かで純粋な民ほど、支配しやすい」


 カマルが笑う。


 「最低ねぇ。でも……そういうところ、嫌いじゃないわ」


 ドルトンは冷たく言い放つ。


 「俺は悪でも構わん。この国を掌握するためならな」



 ーーー命令を受け、レーベル村へ向かう一つの影

――イーヴァン。


 彼女の瞳には、もう意思はなかった。


 読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第三十話 交錯する刃、目覚める呪い

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