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第二十三話 月草と黒の魔物

  森の奥は、暗闇に覆われていた。

 木々の影が絡み合い、地面には赤黒い苔が広がっている。


 「……なんか、ここ…空気が重いね」


 ミナがつぶやく。


 「―――月の影響かもしれない」


翔太は矢筒を確かめながら前を見据えた。


 リィナは口を結び、弓を構えて歩いている。


 「まだ…私があげた弓を使っているのね」


 「…もちろん……使わせてもらってるよ……

その……少し形は変わったけど……」


 「…………?」


 「―――月草は、この先の泉のほとりに生える。……行くわよ」


  三人が進むにつれ、草むらが不自然にざわめいた。

 次の瞬間――黒い影が地面から飛び出す。

 狼のような姿、だが瞳は真紅に染まり、皮膚はすすけた黒。


 「出たわね、黒の魔物!」


 リィナが素早く弓を引いたが、矢が魔物の肩をかすめただけだった。


 「ちっ……やっぱり効きが悪い!?」


 翔太が横に並び、その弓に手を添えた。


 「ちょ、なに――」


  触れた瞬間、翔太の右手の紋章が眩く光る。

 弓全体に黒い紋が走り、木の弓が金属のように硬化していく。


 「これが……俺の……右手の力だ」


翔太が小さくつぶやく。


 リィナが驚きながらも弦を引く。


 「力が……軽い? いける!」


  放たれた矢が、黒い閃光となって魔物を貫いた。

 一体、また一体――倒れていく。だが数が多い。


 「ミナ!」


 「わかってる!」


 ミナが詠唱を始め、弓先の矢に炎が宿る。


 「フレア・アロー!」


  リィナが弦を放つ。

 炎をまとった矢が一直線に飛び、群れの中心で爆ぜた。


 「やるじゃん、リィナ!」


 「当然でしょ!」


  二人の息はぴたりと合っていた。

 翔太は後方に残った黒い獣たちを見据え、右手を掲げる。


 「これだぁ――!」


  手にした弓が、形を歪めながら回転する刃を持つブーメランへと姿を変えた。

 翔太がそれを投げると、刃が弧を描きながら魔物たちを薙ぎ払い、血煙を散らして戻ってくる。


 「……あれが、翔太の力……」


 リィナは息を整えながらつぶやいた。


 全ての魔物が地に沈み、森は再び静けさを取り戻した。



 ――「これが月草よ」


  泉のそば、青い光を放つ草が風に揺れていた。

 リィナが慎重に摘み取ると、小さく微笑んだ。


 「これで……母を助けられる」


 帰り道、リィナはふと翔太に話しかけた。


 「……カインから聞いた。おまえが、人質を救ったって」


 翔太は少し照れくさそうに笑う。


 「ああ…仲間と力を合わせてな」


 「……別に、感謝とかじゃないけど………ありがとう…」


リィナはそっぽを向いた。


 ミナが小声で笑う。


 「はいはい、ツンデレさん」




  ーーー村に戻り、リィナは月草を煎じて母の口元へ。

 時間がゆっくり流れたように感じたあと、母の表情に赤みが戻る。


 「……よかった」


 リィナの頬を、涙が伝った。

 翔太とミナが見守る中、彼女は静かに立ち上がり、翔太の前に歩み寄る。


 「ありがと。おまえらが一緒に来てくれたから、母をこうして助けることが出来た。

それから、お前の右手の力……認めるよ。今まで悪かった……」


 「……いや、それはいいんだ……それよりリィナの母さんの病気が治って良かった」


  翔太は微笑む。

 リィナは少し顔を背けながら言った。


 「なにかあったら……私も力になる。忘れんなよ」



 一方その頃、宿屋では――。


 ジルクがチロルをベッドに寝かせていた。


 「少し休ませてやる。あの子も疲れてるからな。

オイは魔物の討伐に出て来る。その間チロルを頼めるか?」


 宿屋の女将にチロルを頼むと、背中の鉄槌を握りしめる。


 「……さて、俺も行くか。魔物の討伐で少しでも稼がないと」


  ドアが閉まる音が、静かな夜に響いた。

 そして、再び二つの月が、空に滲み始めていた――。



読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第二十四話 謎の女イーヴァン

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