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第十九話 THE・試練其ノ一 ②

 崩れた岩壁の奥。翔太とミナは冷たい空気を切り裂き、進んでいく。通路の先は広大な空洞で、黒い霧が渦を巻き、その中心に人型の影が立っていた。

 威圧感は計り知れない――だが、次の瞬間、口を開いた声は意外なほど軽い調子だった。


 「THE・試練。其ノ一!」


 だがその雰囲気とは裏腹に、空気を震わせるような圧倒的な魔力が

広間を満たしていく。


 「ふざけてんのか……?」


  翔太が歯を食いしばる。

 魔物は剣を構えた。その目には笑みすら浮かんでいる。

 翔太とミナは同時に前へ出た。


 「行くぞ、ミナ!」


 「うん!」


 ミナの杖が光を帯びる。かつて欠けていたはずのそれは、翔太の手に触れたことで形を変え、真の力を取り戻していた。放たれる炎の矢は、これまでの比ではないほど鋭く、黒の魔物の鎧を焼いた。


 「効いてる!」


ミナの顔に希望が宿る。


 「なるほど……面白い。そうでなくては試練にならん」


  魔物は楽しげに呟き、剣を振るった。

 轟音とともに翔太が弾き飛ばされる。必死に受け止めても、腕が痺れる。


 「くそっ……強すぎる!」


 追撃の影が迫る。ミナが杖を振りかざし、炎の壁を作って割り込んだ。


 「こんな使い方だって出来るんだから!」


 だが、炎の壁を突き破り、漆黒の剣が無数に飛来する。

翔太は一歩遅れ、右腕を正確に撃ち抜かれた。


 「ぐああああああっ!」


 血が飛び散り、右手が切り落とされた。


 「翔太!」


ミナが叫ぶ。慌てて翔太の元に駆け寄るが、そこにも影が迫っていた。


 「やめろぉおおっ!」


  翔太が振り返るより早く、黒の刃がミナの胸を貫いた。

 ミナは吐血しながらも、微笑みを浮かべて翔太を見た。

 声にならない。だがその瞳が告げていた―― 「後悔はしていない」と。

 暗転の中、ミナが記憶を遡る。



 ―――幼い日の光景―――


  笑顔で食卓を囲む家族。だが、ある夜を境に全てが崩れた。魔物の咆哮。両親の悲鳴。血の匂い。

 孤独に泣きじゃくる少女を拾い上げたのは、村はずれに住む一人の

 老魔法使い“ルイド”だった。


  「もう大丈夫だ。お前は今日から私の弟子だ」


 老人は優しく、根気強く、心に傷を負った少女に魔法を教えた。何かに打ち込めば、少女は変われるのではないか。しかし、傷は深く、心は閉ざしたままだった。

それでも老人は諦めず 「友達が出来れば変わるかもしれない」と、レーベル村に引っ越すことにした。


 そこで、老人は何度も何度もミナと友達になってくれそうな子をさがしてまわった。

その甲斐もあり、一人の少女が友達になうとミナに寄り添ってきてくれた。


 リィナだった。

リィナと遊ぶようになって最初のころは、笑うこともなく、ただ一緒に居るだけの日が続いた。

そんなある日、自分のドジを笑われたことが嬉しくて、心を許すようになり、やがて笑顔を取り戻した。


 それからの彼女は、沢山の人と出会い笑って、生きる喜びを知り、今は亡き両親、そして何より自分を救ってくれた

師匠に感謝しながら、前向きに生きていこうと考えられる様になった。


そして、心を揺さぶられる相手に出会うことになる。


  ―――それが翔太だった。

 胸の奥に芽生えた恋心。幸せだと感じる時間。

 だからこそ、翔太と共に歩む覚悟を決めていた。



―――現在―――


 彼女の身体が崩れ落ちるのを見て、翔太の心は砕けた。


 「やめろ……やめろぉおおおおっ!!!!」


 切り落とされたはずの右腕が蠢き、闇と光を融合させたような異形の刃に変貌する。


 「……また俺のそばで…………どうして俺は弱いんだ!」


 狂気の叫びとともに振り下ろした斬撃は、異常な速度で魔物を襲った。


 「ぬぅ……速い……!?」


魔物は驚愕し、鎧を切り裂かれ、紅い血が飛び散る。


 「ぐぬぅぅぅっ!」


 だが魔物はすぐに反撃。巨大な闇の奔流が翔太を吹き飛ばし、岩壁に叩きつけた。意識が遠のく―――――





 ―――意識を取り戻した時、翔太は洞窟の外にいた。


 「……魔物は!? ミナは!?」


 翔太は跳ね起きた。


 「落ち着きなさい」


  柔らかな声がした。

 そこに立っていたのは、豊満な肢体を持つ女性――シーカ。


 「心臓は外れていた。治癒魔法で癒したわ。あの子は無事よ」


  横を見ると、ミナが眠っていた。胸は上下し、確かに息をしている。

 安堵のあまり、翔太は涙をこぼした。


 「ふん、男が情けない!」


横で鼻を鳴らす男――カイ。痩せた体格、鋭い目つき。


 「ありがたく思えよ。俺があんたらを運んでやったんだ」


 「私はシーカ。そこの彼はカイよ」


 新たな二人の登場に、翔太は拳を握った。眠るミナを見つめながら、心の奥で誓う。


(……必ず強くなる。俺のそばで仲間が傷つくのは見たくない!)


読んでくれて、ありがとうございました。

次回、第二十話 二つの月の夜

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