追放の余波④
<門を出るゼノを見送る仲間たち>
王国の門が静かに開かれ、ゼノ・ヴァルグレイスの背中がゆっくりと遠ざかっていく。
その姿を、王城の一角から見つめる者たちがいた。エレナ、ダリウス、フローラ、そしてレオン——かつての仲間たち。
「……本当に、行かせるのね」
フローラの声は震えていた。彼女の指は握りしめられ、今にも走り出しそうだった。
「こんなの、おかしいだろ……!」
ダリウスが低く唸るように言う。彼の拳は力任せに壁を殴りつけられた。
「王国のために戦い続けてきたのはゼノだ。命を何度も懸けて、俺たちを、王国を救ってきたんだ……それなのに!」
エレナは何も言えず、ただじっとゼノの背中を見つめていた。彼が振り返ることはなかった。その事実が、彼女の胸に深く突き刺さる。
「……レオン」
フローラがレオンを見た。涙を浮かべた瞳に込められたのは、怒りではなく、問いだった。
「あなたは……止めなかったの?」
レオンは唇を噛む。
「俺に……どうしろっていうんだ」
「何か方法はあったはずよ! あなたが王に掛け合っていたら……」
「王国の決定だ」
レオンはそれ以上の言葉を発せなかった。彼自身、ゼノを見捨てるつもりはなかった。だが、王国の決定に背けば、彼もまた追放されることになっただろう。
「それでも……」
フローラは俯き、震える肩を抱くように両腕を交差させた。誰もが間違いだと分かっていた。だが、それを止めることができなかった。
「王国の決定なら、何をしてもいいっていうの……!」
エレナは自分自身に苛立つように言葉を発したが、それ以降は押し黙ってしまった。
やがてゼノの姿は、門の向こうへと消えていった。
誰も、言葉を発することはできなかった。