王国軍、緊急迎撃態勢を敷く③
<ベルスタイン、突如として混乱が始まる>
王都近郊の街、ベルスタイン は、静かな夜を迎えていた。 昼間の喧騒は消え、家々の窓からは暖かな灯りが漏れている。露店もすっかり片付き、人々は各々の家で眠りにつこうとしていた。
そんな静寂を引き裂いたのは、突如響いた轟音だった。
家の中では、一家が静かに夜を過ごしていた。暖炉の火がゆらめき、家主は布団にくるまりながらうとうとしていた。すると突然——
ドンッ!!
壁が大きく揺れ、梁が軋む。家の中の棚が崩れ、陶器が床に砕け散る。
何かが建物に激突するような音が、夜の街を震わせる。衝撃に揺れる家屋、舞い上がる土埃。
「な、なんだ!? 何が起こった!?」
家主が飛び起き、外を見ようとすると、壁に大きな穴が開き、そこには不気味な影が揺れていた。数秒の静寂の後——
「ぎゃああああ!!」
悲鳴が夜の闇を突き破った。
家の中でくつろいでいた住民たちは、慌てて窓を開ける。街灯に照らされた通りの向こう、崩れかけた壁の前で、大きな影が揺らいでいる。
「な、何だ……?」
住民たちは恐る恐る影を見つめた。街の路地に、異様な動きをする影が複数、ふらつきながらさまよっている。
「魔物か……?」
「まさか、魔王軍……?」
影たちは何かを叫んでいる。しかし、その言葉は意味を成さず、くぐもった呻きのように聞こえる。
「おい……こっち、くるぞ!!」
住民が叫ぶや否や、群衆が一気に騒ぎ出した。
「誰か! 騎士団を呼べ!!」 「逃げろ! 街が襲われるぞ!!」 「くそっ、どこから来たんだあいつらは!?」
ベルスタインの市街の警備兵が駆けつける。震える手で剣を抜き、影へと声をかける。
「お、おい! そこにいるのは誰だ!? 動くな!!」
しかし、影たちは返答せず、ふらつきながらなおも進む。その動きはどこか異様で、不気味だった。
「こ、こっち来るな!!」
恐怖が警備兵たちの背筋を凍らせる。次の瞬間——
「魔王軍の襲撃だ!!」
誰かがそう叫んだ。その言葉が伝染するように、ベルスタインの街は一気に混乱へと飲み込まれた。
「鐘を鳴らせ! 緊急警報だ!!」 「王都へ急報! 王都へ急報!!」 「早く!! 奴らが攻め込んでくる!!」
警備兵たちは慌てて街の鐘を叩き鳴らし、王都への伝令を走らせる。
これが王国全土を巻き込む騒乱の始まりとなった。




