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聖騎士誕生、王国に激震①

 王都の朝は、いつもと変わらぬ静けさに包まれていた。冬の到来を感じさせる澄んだ空気が城下町を満たし、商人たちが店を開け始め、朝の鐘が低く響く。王城の石畳もひんやりとしており、城門の衛兵たちは肩をすくめながら交代の時間を待っていた。


 しかし、その平穏は突如として破られる。


「聖騎士が誕生したぞ!」


 城の奥深くから駆け出してきた伝令が、息を切らしながら広場へと飛び込んできた。その声は瞬く間に人々の耳に届き、城下の通りに響き渡る。商人たちは手を止め、貴族たちは顔を見合わせ、警備中の兵士たちは思わず武器を握り直す。


「聖騎士が誕生した……?」「任命されたということか?」「だが、あの光は……?」


 人々の間で噂が飛び交い、王都は一気にざわめき始めた。


 王城の大広間では、すでに一部の高官たちが集まり、騒然とした雰囲気の中で話し合いが進められていた。王国内でも限られた者しか知らない『聖騎士の誕生』という事実。それが公に発表されるよりも前に、宮廷の中枢では事態の把握と対応策を急いでいた。


「聖騎士が……レオン・アルバードだと?」


 低く響く声が広間にこだまする。その声の主は、王国の最高司令官であるゼルゲート将軍だった。壮年の武人であり、長年にわたり王国の防衛を担ってきた彼は、眉をひそめながら報告書を握りしめた。


「間違いありません。神の啓示を受け、聖女セシリア様が聖騎士の誕生を宣言されました」


 文官が慎重に報告するが、広間にいる貴族たちの間には驚きと困惑が広がっていた。


「王が任命した聖騎士ではなく、神から啓示された聖騎士だと?伝説の存在ではないのか?」


「では対となる魔王の復活も・・・」


「レオンは、確かに優れた騎士ではある。しかし、ゼノ・ヴァルグレイスこそが聖騎士になるべきだったのでは?」


「ゼノはすでに追放された……今さら何を言っても仕方あるまい」


「しかし、レオンがこの国の新たな象徴となるというのか?」


 誰もが戸惑いを隠せなかった。


 聖騎士とは、王国における『神の加護を受けた戦士』であり、これまでの歴史において特別な存在であり続けた。しかし、千年前に神の加護を受けた聖戦士が登場して以来、誕生することはなかったため、今では王国内の最高の騎士に与えられる称号となっている。


 伝説の神の力をもった戦士、その名を受け継ぐのが、筆頭騎士とはいえ一介の騎士であるレオンだというのは、あまりに唐突すぎる。


「すぐに聖騎士誕生の報を正式に発表し、国民を安心させねばならん」


 貴族派の重鎮がそう主張する。しかし、それに対して軍部の者たちは慎重な表情を浮かべた。


「我々は慎重に対応すべきだ。まだレオンの力が聖騎士に相応しいかどうか、確認できていない」


「神の意志を疑うつもりか?」


「そうではない。しかし、王国の未来を担う存在なのだ。安易に持ち上げるべきではない」


 その議論が続く中、王城の窓の外では、聖騎士誕生の噂がすでに広場や市場へと広がり、人々が期待と不安の入り混じった声を上げていた。


 そして、その中心に立つことになるレオン・アルバード本人は——まだ自らの運命を受け入れきれていなかった。


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