魔王の復活⑤
<目覚める魔王>
ゼノは目を覚ました。
石造りの天井が視界に入り、ほのかに感じる硫黄の匂いが鼻をつく。体を動かそうとすると、驚くほどの力が全身に漲っているのを感じた。
「お目覚めになりましたか、魔王様」
柔らかくも凛とした声が響く。ゼノが身を起こすと、ベッドの横にはまるで絵画から抜け出したような美少女が立っていた。白く艶やかな髪を優雅に揺らし、完璧な微笑みを浮かべている。
「……誰だ、お前?」
「フィーネ・ルシフェリアと申します。これより、魔王様の身の回りのお世話をさせていただきます」
お世話係……? と疑問を抱くゼノだったが、そこにもう一人の女性が進み出る。
「目覚めが早かったわね。もう少し寝かせておいてもよかったのに」
低めの落ち着いた声。ゼノが顔を向けると、金色の瞳を持つ女性——リリスが腕を組んで立っていた。
「……状況を説明しろ」
ゼノが訝しげに言うと、リリスは微笑しながら頷いた。
「ご安心ください。すべての準備は整っております。まずは、玉座の間へどうぞ。魔王軍の幹部たちが、魔王様の復活をお待ちしております」
ゼノは仕方なく立ち上がり、フィーネとリリスに案内されながら廊下を歩いた。
…
玉座の間。
ゼノが足を踏み入れた瞬間、そこに並ぶ魔王軍の幹部たちの姿が目に飛び込んできた。
——全員、土下座。
一瞬、異様なまでに厳かな空気が漂い、ゼノは思わず身構えた。しかし、よく見ると……。
「……こいつら、ただの酔いつぶれじゃねぇか」
全員が床に伏しているのは、ゼノに忠誠を誓っているわけではなく、単に飲みすぎて昏倒しているだけだった。空になった酒瓶があちこちに転がり、僅かに響く寝息が玉座の間に漂う。
「おーい、魔王様きたよー」
そんな静寂を破るのは、レミの声だった。彼女はゼノの顔を見もせず、床に突っ伏しているヴォルクの肩をつんつんと突く。
「おいヴォルク、起きろってば。魔王様、復活したってばー」
しばらくの間、何の反応もない。ゼノは「やっぱりただの酔っ払いでは……」と確信しかけたその瞬間——。
「……ハッ!!」
ガバッ!! と一斉に幹部たちが飛び起きた。
「魔王様、ついにご復活なされました!」
「この時を、待ち望んでおりました!」
「魔王様のために、乾杯を!!!」
ヴォルクの掛け声とともに、突如として「魔王様! 魔王様!」というコールが巻き起こる。
「……え? 何この流れ?」
ゼノが困惑している間に、幹部たちは次々と酒を煽り、なぜか一瞬で復活。全員が腕を組み、「魔王様コール」を再開している。
「いや、お前ら、何で全員復活してんだよ!?」
ゼノのツッコミも虚しく、ヴォルクが拳を高く突き上げた。
「さあ、魔王様復活の儀式の続きだ!!!」
「もう一回寝てろ!!!」
ゼノの叫びが、魔王城に響き渡った。




