不老の泉と滅亡の帝国
別サイトで投稿した作品です。
あるところに『帝国』と呼ばれる国がありました。
帝国は戦争が強い国で、ドンドンと周りの国を滅ぼし、帝国の領土としてきました。
しかし、無敵の帝国でも勝てない国がありました。その国には、噂によると不老の泉というものがあり、その泉の水を浴びると、不老になれるというものでした。不老になれるだけではありません。細胞の自然回復力も底上げする力がありました。
いくら斬っても立ち上がり、また向かってくる。
戦場ではかず多くの死者と怪我人が出ました。
そんな時に私は帝国によって調査を命じられた記者の一人でした。
決して安全な場所ではありません。国の秘密を探るとなると、バレたら首が飛びますからね。
実際行ってみると、そこまで危険ではなさそうな国でした。皆人当たりがよく、本当に戦争中なのかというほどでした。そのため、より一層恐怖を抱きました。
「おや、あなたは外国から来られた方ですか?」
人当たりのよさそな男性がそういう。
「は、はい。ここには不老の泉というものがあると聞きましたが…」
「不老の泉などという名前ではありません。神の泉です。」
「は、はあ…。ではその神の泉に連れて行ってはいただけないでしょうか?」
「はい。もちろんです。それでは、この国の民になるという覚悟がおありで?この国は神王国と呼ばれるほど神に対する忠誠心が高い国です。神が恵んでくださった神の泉の効能だけを得て元いた国に帰ろうという不届き者なのであれば容赦は致しませんよ?」
と、恐ろしい顔で言われる。
「い、いえ、そんなことは決してありません。私もこの国の神は素晴らしいと思っていたところなのです。矮小なる人間に神の力の一端を恵んでくださるとはなんたる優しさ。その神格はとても高貴なのでしょう。」
「おお、分かってくれますか!あなたは見込みがありますね。それではこちらへどうぞ。」
男がそう言い、呪文を唱える。
「『解錠』」
後ろの大きい扉が、キキキイと、軋む音を鳴らして、開く。
そこには、たくさんの人がおり、その中心には透明度がとても高い、泉がありました。
「こちらが神の作った都。『理想郷』でございます。」
「お、おお…」
神の泉を中心とした都はその名の通り理想郷だった。人が笑い、鳥が飛ぶ。色々な音で溢れ、幸福に満ちた都。それが理想郷なのである。
「それでは、あなたも紙の泉の近くに寄ってください。そうすればあなたに神の祝福が授けられるでしょう。」
「は、はい。」
そう言って私は恐る恐る泉に向かって足を伸ばした。近くに寄ってみれば、なんということだろう。視界が真っ白になったのである。
『こんにちは。あなたは新しい国民?いや、あなたは帝国の方ですか。』
「なっ、何故それを?」
『そうですね。話してみてもいいかもしれません。私は決して神などではありません。少し魔法が得意なだけの人間です。』
「なっ、魔法⁉︎遥か昔に滅びたとされるあの伝説の魔法ですか⁉︎」
『ええ、そうです。私は昔から帝国とただならぬ因縁がありました。あなたも帝国の恐ろしさは身に染みているでしょう?」
「なっ…」
『言い返せないでしょう?何故なら、あなたの記憶の奥底には忌々しいものがあるのですから。』
「だからなんだというんだ!失われたものは二度と戻らない。」
『本当にそう思っているのですか?かつて魔法の中には、『蘇生』というものが存在いたしました。文字通り死者を復活させるものです。』
私はあるはずのない魔法に心が少し傾いた。私は帝国と皇国の戦争時の被害者だ。昔、私の家族や友人は生贄にされた。私を強化するという方針で。私がここにきた理由は契約でもあり、希望でもあったのだ。不老の泉があるのであれば、彼らも生き返ってくれるのではないかと。今の帝国の国王は知らない。私がこの国のエネルギー源を支えているということを。当然私が帝国から逃げ出せば、縛りによって私は死ぬ。だが賭けてみたいと思った。本当にできるのなら、いいんじゃないかと。
『あなたに覚悟があるのならこちらへきなさい。ないのであれば今すぐ引き返すのです。』
「私を舐めないでいただきたい。とうの昔に覚悟などできている!」
そう言って私は一歩声のする方向へ踏み出した。
そして今私は、幸せに暮らしている。そうして帝国がどうなったかは、皆さんの想像にお任せする。では、またこの不思議な不思議な国にあなたも訪れてみるといいでしょう。この『理想郷』に。