金平糖
旅先で買った金平糖がまだ残っていた。
赤色の金属缶の裏を見ると、賞味期限はとうにすぎている。
蓋を開けると、薄い透明のフィルムに包まれた砂糖の破片は、原形を残したまままるまって窮屈そうに収まっている。
最後に食べたのはいつだろうか。記憶にある金平糖の感触より幾分か固い。コロコロと音を立てて口の中で溶けていく。刺刺とした角も段々と丸まっていく。
この金平糖は当初は誰かにあげるつもりだったのだ。
でも人なんてどうなるか分からない。結局、金平糖は誰にもあげずじまいで、棚の奥に眠っていた。
それでも記憶の中で残って、ついつい気になって結局開けてしまったのだ。
本当は、本当は認めたくなかったのだ。
人が変わって自分が変わって、それだけで全てが変わってしまうことが。
いつまでも同じ姿で止まり続ける私の中の記憶が、すでに時間と合わずに歪んでいる。
私の記憶こそ金平糖だ。
いつまでも星の輝きを持ったまま、いつまでも理想のまま、眠っている甘い毒。
忘れられない記憶をただ棚の奥に詰め込むので精一杯なのだ。