5月27日 練習試合(白峰工業高校)4
今日は、バッティング練習かぁ。想像はしていなかったが、楽しそうにみんな飛ばしていた。
ー5月24日ー
ピッチャーの足元を抜けた瞬間、大きな歓声が聞こえる。ショートの丹生は、鋭い目つきでボールを見つめていた。打球は低く速い打球が飛んでいく。丹生は、ボールから目を一瞬離さず、体を低く沈めて準備を整えるていた。白峰工業高校のショート丹生は、精一杯グローブを出す。ボールは、まさに彼の腕のところへとやってきた。柔軟な動きで手を伸ばし、指先でわずかに触れると、次の瞬間には完璧なキャッチに成功した。やばい、さされる。俺は、一生懸命一塁をめざしたが、彼の守備は完璧だった。彼の手のひらに収まったボールは、軽快に一塁へとボールを送球したのだった。
俺が一塁に到達する前には、ファーストがボールを捕っていた。守る白峰工業高校ナインたちからは、拍手と大きな歓声が湧き上がっていた。一方、聖徳高校はさらにテンションが下がっている。クソォ!!悪いあたりじゃなかったのに、こういう展開になるなんてな。
悠太「どんまい」
俺 「‥‥‥‥‥‥」
一塁ベース近くまで来たのは、さっき代打に立った悠太だった。
悠太「ここから、ここから」
俺 「‥‥‥‥‥‥」
俺のグローブを悠太は、持っていた。
悠太「ほい」
俺は、悠太から渡されたグローブを受けとった。
俺 「ありがとう」
悠太「気にすんなよ」
ショートの丹生にボールを捕られたことは納得がいかない。でも、試合だ。悠太の言う通り切り替えないと。
俺 「わかってるよ」
悠太「がんばれ」
俺 「おお」
ヘルメットとバッティング手袋を悠太に託し、センターへと走り出した。攻守交代の合図が鳴り響いたグラウンドで、俺はセンターへのポジションに着いたのだった。ライトの安田は、笑顔を交わしながらゆっくりとボールをこちらに投げるように指示を出したのだった。安田の投げたボールをめがけながら、軽くグローブを振りライトに歩み寄った。この回からピッチャーは、竹田に代わり葛西がマウンドに上がっていた。しかし、また打たれそうな気がする。そう思うのは俺だけだろうか。葛西は、スピードボールがないことに加えて、変化球もスライダーしかない。こんなんで抑えれるのだろうか?俺は、一定の距離を取りながら安田の方に向かってボールを投げ込んだ。最初はゆったりとした山なりのボールから徐々に鋭いボールに変えていった。




