5月23日 枠
バッティングゲージの外から、橋本、八幡、佐伯たちの打球の行方を見ていた。たしかにこいつらのバッティングは悪くない。守備力も含めると、レギュラーになるのも理解できる。ただ、俺だって。持っていたバットに力を入れた。
悠太「明日の準備はできたか?」
次のバッティング練習で同じ組の悠太は、手袋をつけていた。
俺 「まぁ、それなりにな」
悠太「テンション低いじゃねぇか」
そりゃあそうだろ。なんで橘がライトで出るのかわからない。バッティングなら、俺の方が勝ってるだろ。
悠太「そんな落ち込むなって」
何も話さない俺に声をかける。まぁ、今までもこういう理不尽なことはたくさんあった。投手から野手に転向。内野から外野へのコンバート。いつしか、こうした理不尽なことに対しても、すぐ感情的になったりしなくなっている自分にも嫌気がさす。高校生活で少しは耐性ができたのかもな。でも、嫌でも認めさせてやる。そうしないと、俺の気がおさまらない。
俺 「まだ、枠がないわけじゃねぇ」
悠太「そうだぞ。安田も小川もこの前の試合で結果出してるわけじゃないし」
俺 「わかってるよ」
たとえ橘が出たとしても、後2つの枠が残っている。自力で奪ってやる。
悠太「もし2試合目でも、打てばレギュラーになるチャンスだぞ?」
俺 「2試合目じゃねぇよ。1試合目な。てか、悠太もレギュラー狙えよ」
悠太「俺は、後2枠あかないと無理だな」
満面の笑みの悠太。気持ちはわからなくないが、俺は諦めたくない。もし、ここで諦めてしまったら。今までの苦労が全部水の泡だ。投手から野手にコンバートしたのも、全ては報われる日のためだ。"終了ー"。マネージャーの合図に川中が声を出した。
俺 「お前、どこから打つ?」
悠太「真ん中かな」
俺 「じゃあ、俺はその横から打ちますか」
真ん中は、バッティングマシーン。その横には、ちょうど2年の安田が投げていた。
悠太「ちょうどいいじゃないか」
俺 「そうだな。直接対決といきますか」
バッターボックスから眺める投手安田はひ弱そうに見える。ボールを拾い終えると、俺たちの組のバッティングが始まった。安田は、打ちやすそうな緩いストレートを放つ。こんなボール投げてくるなよ。怒りとともにスイングし打球はライトの頭上へと飛んでいったのだ。




