5月15日 聖徳or道和
悠太は、なぜ聖徳高校に来たいのか。俺には、全く理解できなかった。悠太なりの考えがあるのだろうけど、俺には響かない。
俺 「じゃあ、聖徳行くのか?」
奏太「今のところは」
聖徳に入ってからでは遅い。止めるなら今。俺の心は、葛藤していた。
俺 「絶対反対されるだろ?」
奏太「まぁそうかもね」
正直、俺も聖徳ではなく、他の高校に行っていればと思うタイミングが何度かあった。
俺 「もう他は考えないのか?」
奏太「道和かな」
道和高校。そっかぁ。俺たちが次に練習試合をする相手だった。
俺 「道和だったら、今度、練習試合あるから観にこいよ?」
奏太「そうなの?」
まだ俺は言っていなかったことに気がついた。道和高校には、プロ注目の八乙女、黒木というバッターがいる。奏太には参考になるだろう。しかも、道和高校は、今甲子園に一番近い学校でもある。そこからスカウトが来ているなら挑戦すべきだろう。
俺 「ああ。17日にあるよ」
奏太「行きたい、行きたい」
目を輝かせていた。
俺 「まぁ、俺は出ないけど。両チーム見るにはいい機会だろ」
奏太「オッケー。行ってみる」
まぁ、道和高校の選手が主力を出すかどうかはわからないけど。楽しみではあった。
俺 「じゃあ、それで決まりだな」
奏太「お兄ちゃん出ないの?」
俺 「まぁ、厳しいな」
奏太「えっー。久しぶりにお兄ちゃんのバッティング見たいから絶対出てよ」
そう言われると嬉しいけど素直には喜べない。たしか、この日は取手高校との試合もある。そっちでスタメンで道和高校はベンチなんてなったら最悪だ。とにかく途中出場でもなんでもいい。二試合とも出場したい。
俺 「出れたらいいんだけどな」
奏太「今、お兄ちゃんは外野?」
俺 「ああ。でも、外野は2年が二人いるんだよ」
奏太「えぇ、2年に負けてるの?」
俺 「そうなんだよなぁ」
試合に出れないことより2年に負けているというこの現実がなかなか受けいれれなかった。2年で出ている安田も小川も監督の好みで出ているわけではなかった。二人とも長距離ヒッターではないけど、確実にヒットを打てるタイプで試合に出るのも理解はできた。毎試合ヒットを1本を打つ様なタイプで、俺みたいに好不調の波はほとんどない。俺もあんなタイプになれたらよかったんだ。




