4月24日 標準
グラウンドに野球部の選手の姿が少しずつ見えてきた。あれは、橘だろうか?橋本たちと笑顔でウォーミングアップをしていた。最近、この辺りからアイツらを見る日が多くなった。そう思えば思うほど、レギュラーとの距離が離れてくる。
俺 「今日のメニューなんて言ってた?」
悠太「今日は、ノックだって」
悠太は、カバンの中に荷物を整理していた。一方の俺はまだ教室を出れる状態ではない。
俺 「じゃあ、残って宿題するわ」
悠太「早く練習いけよ」
それどころじゃなかった。
俺 「今日、英語の課題してねぇからな」
悠太「やってなかったのかよ」
俺 「ああ。昨日練習終わったら、すぐ家帰って寝てしまっててな」
最近、妙に勉強する気が起きない。GWが開けると中間テストも始まる。今のままではやばい。
悠太「お前も大変だな」
俺 「まぁ、どうだろな?」
野球と勉強のバランスをとることに苦労していた。弟の奏太くらい野球が上手ければ勉強もしなくていいのに。野球が下手な自分を恨んでしまう。
悠太「それ、すぐ終わるの?」
俺 「あと15分くらいあったら終わるよ」
一気に悠太は、表情が暗くなってしまう。
悠太「GWも試合あるんだから早く来いよ」
俺 「わかってるよ」
時計を見た悠太だったが、なかなか教室を出ようとはしなかった。
悠太「何たくらんでるんだよ?」
俺 「GWの一番最初の試合ってどこだっけ?」
別に練習でどれだけいいプレーをしても試合で結果がでなきゃ意味がない。最近、試合の重要性を感じていた。
悠太「30日の多田高校だ」
俺 「その次が江陵だっけ?」
悠太「ああ」
GWの試合でしっかり結果を出せば、"聖淮戦"に出れる確率も高くなる。
俺 「だったら、俺の標準はその江陵だな」
悠太「多田高校はいいのか?」
俺 「ああ。あそこよりも江陵だろ。あそこだったら、みんなが打てるわけではないしな」
江陵高校は、野球が強いしチームも勝てないだろう。でも、いいピッチャーから打てば評価も上がるだろ。俺は、そんなことを考えていた。
悠太「打たないところで打とうってわけか」
俺 「その通りだ」
悠太「相変わらず、せこいな」
俺 「どこがだよ」
俺は笑いながら、英語の宿題をすすめていくのだった。




