4月23日 若林宏太
俺は、外野でバッティングのボールを追っかけていた。今日は、悠太がまだ練習に来ていないこともありテンションは低めだった。ボールが飛んだ先は陸上部近く。陸上部のみんな走っている。先頭で帰ってきた若林はタオルをかけながら、トラックを見ていた。若林は、二年の時に同じクラスだったがとても面白い奴だった。誰からも好かれるけど、どこか他の人とは違う。独特の空気感をもっていた。俺は、いつも趣味の漫画の話をして盛り上がっていた。俺たちは、アクションものの漫画が好きで、最新刊についての感想を話し合いながらこれからの展開を想像していた。野球部と話すより、若林と話していた方が数倍楽しいと思えていた。
まだ二宮や早木たちは終わっていない。そして走り終えた若林のもとに篠木がやってきた。そういえば、あの二人って仲がいいのか?いつも二人で話すのをよく見る。昔から篠木はBIG3の中でも、一番謎が多い奴だった。矢田は天真爛漫で明るく、高田は誰とでも話している。しかし、篠木だけは何を考えてるかよくわからない印象だった。矢田や高田は男子と付き合っているけど、篠木はどうなのか誰も知らない。噂だけが1人歩きしているのだ。この前聞いたのは、サッカー部の宝来と付き合っているんじゃいなかというのを野球部が言っていた。
若林「あっー、もう」
篠木が近づいて来たというのに、まったく嬉しそうな表情は見せていなかった。何か納得がいかないというのだろうか?勢いよくボールが転がってくる。どうやら、俺の元へと打球が飛んできたみたいだ。相変わらずよく飛ばすな。今、バッティングをしているのは橋本だった。若林と篠木の会話を聞いてると、どうやら若林がどこか故障をしている様だ。走れてるくらいだから、重傷ではないと思うんだが。この時期に故障は辛いな。もうすぐ、"聖淮戦"もある。若林はペットボトルを地面に置き篠木に話し始めた。篠木は、病院を勧めているようだが、若林はあまり乗り気じゃないみたいだ。そりゃあ、そうだよな。怪我ほど苦しいものはない。すると、2番目に二宮、その後ろに早木と戻ってくる。それを見るように篠木も二人の元へ駆け寄っていく。タオルを頭にのせながら、シューズをもって部室へと歩く若林であった。普段なら、若林に声をかけるが今日は声をかける雰囲気じゃなかったので、そのままレフトのポジションへと歩き出した。




