4月15日 理不尽
ベンチに座りながら、スパイクを履く。毎回、この作業がとてもめんどくさいと感じていた。試合の時以外は、ランニングシューズでもいいのにな。
川中「早川!!」
俺 「ん?」
後ろから、川中の声が聞こえた。
川中「監督が次の試合、サードで使うかもしれないから練習しとけって」
俺 「へぇー。サードかぁ」
サードで試合に出るのか。あんまりイメージ湧かないな。問題は、なぜ俺をサードに出すのかってこと。監督としては、外野のメンバーは、あの3人に固定したいっていうことなんだろうな。それは、困る。
川中「やったことあるのか?」
俺 「ああ。中学の時にな」
俺が内野に行けば試合に出れるのかもしれない。けど、内野の守備もあんまり上手くないのは確かだ。
川中「じゃあ、ノックの時に入ろうか」
俺 「おお。佐伯は、どうするんだ?」
俺がサードに入ると、絶対的なレギュラーである佐伯はどうなるんだろうか?
川中「佐伯は、ファーストで考えているらしい」
俺 「お前は、どうするんだよ?」
佐伯がファーストに行けば、いつもファーストを守っている川中は?
川中「ピッチャーかベンチだろうな」
俺 「なるほどな」
サラッとベンチと言える川中は、器が大きいように感じた。
川中「監督は、お前のバッティングに期待してるんだろ?」
俺 「期待されてたら、もっと早く出てただろ?」
いくら肯定的な声をかけてもらっても、監督に期待されてるとは思えなかった。誰もいないから、回ってきたチャンスなんだろうな。悔しい。
川中「まぁ、高校入ってから怪我も影響してたしな?」
俺 「それは関係ないよ」
怪我をしていた影響はあるけど、それは人に言われたら否定したくなる。
川中「大丈夫、お前ならやれるよ」
俺 「どうだかね」
なぜ、川中が言うのか。それは、わからなかった。今まで、ずっとレギュラーだった川中に俺の気持ちはわからない。そう言う声かけがいいと思っているのだろうけど、実際は違う。
川中「そんなに自信ないのか?」
俺 「違うよ。自信しかねぇよ」
自信なければ、今頃辞めてる。今まで、理不尽だと思っていたことを自分が合っていたと示したい。
川中「まぁ、頑張れよ」
俺 「ああ」
川原は、大きな声を出しながら、ファーストのポジションについていった。




