4月13日 練習
お父さんがあげたボールを奏太は俺のところまで打ってきていた。俺は、少し前に走り、ボールがグローブの中に入っていく。奏太とお父さんからだいぶ離れた俺は、二人が何を話しているのかわからない。今日は、久しぶりに、3人でバッティング練習をすることになってしまったのだ。レギュラーではない俺がコイツらと一緒に練習する意味があるのだろうか?と不思議な気持ちになっていた。昨日の動画で見ていたように、奏太の飛距離は、相当なものだった。現時点で、高3の俺と変わらない。ここから体づくりをしていけば、さらに飛ばすことができるだろうな。そんなセンスがある奏太が羨ましかった。しかし、進路選択としてまだ聖徳高校が残っているため、なんとか道和か純新に行ってもらうように話をしていた。
奏太の言い分だと、来年聖徳高校にいい選手が入ってくると聞きつけたらしい。それが、あのBIG3である篠木七海の弟。篠木蒼大。偶然にも同じ名前。彼は、軟式野球に入っているらしく今年は、全国大会にも出るのじゃないかと噂されているそうだ。そんな彼のいるチームには、俺らのチームのエースである橘の弟もいるとか。篠木の弟の話は、時折、橘から聞いていた。橘によると、相当上手いらしい。ポジションは、キャッチャーとピッチャー。メインはキャッチャーらしいが、ピッチャーとしても登板することがあるらしい。篠木の弟は、奏太と同じく複数の高校からスカウトが来ているらしい。
しかし、地元の高校で甲子園を目指したいという想いから他の高校への誘いは断ろうとしているという情報を聞いていた。それが本当かどうかはわからないけど、篠木も聖徳高校だから、そこに来るのは自然だと思った。奏太が言うには、篠木の弟が聖徳高校に入ったら、他のいいメンバーもやってくると考えていた。キャッチャーに篠木の弟、ショートに蒼大がいて、あとはいいピッチャーがくれば上が見えてくるみたいらしい。
まぁ、俺にとっては関係ないけど、聖徳高校に来るとまた俺の名前が出そうだから嫌だなと思っていた。でも、もしコイツらが本当に聖徳高校に入ったらチームは、本当に強そうだな。1年の優聖も残っているしチャンスはありそうだった。俺は、捕球したボールをバッターの奏太の方に返したのだった。お父さんのアドバイスを聞きながら、懸命に素振りをしていた。大変そうだな、アイツも。負けずに頑張ってくれたらいいなと俺は思っていた。




