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4月9日 ベースランニング(橘怜衣)

 眠たい。昨日は、あまり寝れなかったから、朝からなんか気持ちがフワフワしているような感覚だった。1時間目の授業は、時々こういう時間があった。俺は、ゆっくり教科書を見ながら、今日どんな授業が行われるか考えていた。おそらく、今日は練習問題が中心だ。先生の話を聞かなくても、この問題が解けたら問題ない。俺は、そんなよくない考え方をしてしまっていた。


 ー4月4日ー


 古山からボールを受け取った橘は、三塁ベースを蹴り、ホームベースへと向かった。


 悠太「あと2周だな」

 俺 「そうだな。あそのボールを誰が早く取れるかだろ?」

 悠太「そうだな」


 俺たちは、ピッチャーマウンドに置いてあるボールを見つめた。マウンドの頂に鎮座する革製の球体は、無数の傷跡がついていた。ボールの汚れた表面には、無数の切れ目や凹みが散らばっているみたいだった。たしか野球のボールの縫い目は、全部で108あった気がする。その縫い目が所々裂けているみたい。おそらく、あのボールにもここまでくる時に、いろんなことがあったんだろうなと思ってしまう。

 おそらく、あれは練習球だろう。聖徳高校野球部のボールは、三種類ある。一つ目が、練習球。二つ目がサポート球。三つ目が試合球。それぞれ、ボールの傷具合が違う。練習球は、いつも使っているから当然1番傷がついている。サポート球は、ケースバッティングやケースノック、ピッチング練習で使う。練習球ほどは、傷はついていない。試合球は、全て新球。これは、試合をする度に新しいボールを使うことになっていた。


 俺 「橘元気そうだな」

 悠太「まぁ、エースになったしな」

 俺 「そりゃあ、そうだろうな」


 新チームになった当初、橘はピッチャーではなかった。川中や葛西たちが投げていた。けど、なかなか結果が出ず、冬ぐらいから橘がエースになったのだ。


 悠太「俺も早く試合に出たいよ」

 俺 「お前は、バッティングだろ」


 悠太の1番の課題はバッティングだった。守備は、どこのポジションでもきっちりこなすユーティリティプレイヤーだった。しかし、バッティングではなかなか結果が出せていない。


 悠太「そうだな」

 俺 「俺とお前が混ざれば最強かもな」

 悠太「だな」


 ピッチャーマウンドにおかれたボールを見つめながら、早く橘に戻ってくることを待っていた。次の走者である侑大は、真剣な表情をしている。

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