4月6日 ベースランニング(小山祐介)
バットを振っている感覚は悪くない。やっぱり、出場機会だけだ。俺は、バットを振りながら、今の自分を見つめ直していた。どう見ても、俺は悪くない。これまでも、一定の結果は出してきてつもりだった。バッティングで言えば、打率は312。これは、橋本や侑大に続いての成績。それなのに、試合に出れないというのが現実だ。現実に納得いかないけど、それを帰る方法はない。とりあえず、バットを振って結果を出すしか俺が生き残る方法はなかったのだ。
ー4月4日ー
悠太からボールを受け取ったのは、小山。彼は、まだ2年生。来年以降も、この聖徳高校野球部を背負っていく選手だった。今の2年は、安田、小川、小山、向井の4人が中心となる?おそらく、キャプテンは、この4人の中から選ばれるだろう。その中でも、小山という男は、気配りができる選手だった。打撃だけ見れば、安田や小川の方が凄い。けど、小山は、何でもそつなくこなせて、先輩の俺たちにも可愛がられていたのだ。
三塁ベースを周る。彼の走りを見ていた。2年の中でも、少しずつ派閥というものができてきているみたいだ。いつも、3年生と絡む機会が多いのが試合に出ることが多い、安田、小川、向井たちの一番目立つグループ。西川、古山、高木たちの静かなグループ。他にもいろいろあるみたいだけど、小山はその中で、一人でいることが多いのだ。一匹狼というわけではないけど、群れない強さがあった。
小山の距離が前のランナーと少しずつ距離が近づいてきているのがわかった。このまま行けば、確実に距離が近づいていく。小山から目を離し、その他の2名のランナーも見る。二人とも速い。小山よりも速いスピードで走っているみたいだ。けど、どこともそんなに距離は離れていない。現状、3位ってところか?次のランナーは、誰だ。俺は、横を見た。次は、2年の西川か。頑張れよ、小山。ホームベースを周り、半分まできた。
走り切った悠太は、回復したのか立ち上がり、小山の走りを見ながら声を出していた。コイツも試合に出る時が来るのだろうか?ここまで公式戦の出場は、一試合もない。頑張れよ、お前も。小山と同じようにエールを送る、心の中で。一塁ベースを回った小山は、もうすぐ二塁ベースまで戻ってくる。次のランナーである西川が準備をし始めた。ボールを持った小山が帰ってくる。最後の力を振り絞りながら、ボールを西川に渡したのだった。




