3月16日 モチベーション
昨日の試合から一夜明け、俺たちは再び練習をしていた。少しずつ、春の訪れを感じさせるような天気だった。俺は、いつものようにやる気がないままノックを受けていた。
ー3月15日ー
海美高校のエース春風は、とんでもない投手だった。3回が終わり、6奪三振。このままだと、完封されてしまうんじゃないかと思ってしまっていた。俺は、ベンチから戦況を見つめていた。
試合は、2回裏に、山本、中田の連続タイムリーヒットで海美高校が2点をリードしていた。まだ、2点だけど、この2点は大きい気がしていた。というのも、俺たちがあのピッチャーから、2点も取れない。期待できるのが3番橋本と4番川中。しかし、どちらも怪我明けに加えて、練習試合にも出ておらずいきなり本番という展開だった。
心の中では、なんでコイツらが試合に出るんだという想いは強かった。たしかに橋本は、チームで1番いいバッターだ。川中もキャプテンで打球の飛距離もすごい。でも、そんなことで判断したらいけないだろ。心の中でキレそうになっていた。
俺は、ある意味努力を諦めた人間だから、試合に出れなくてもそんなに文句は言えない。でも、怪我をして戻ってきてからも努力し続けた健太郎やこれまで公式戦に出たことがないが、練習試合で打ちまくっていた山田を使うべきだろう。
どの競技でもそうだが、ある程度スタメンが固定されてくると、ベンチメンバーは指揮が下がってしまうものだ。俺たち3年で言えば、俺や永谷が代表的だろう。特に、永谷なんかは俺と同じで中学までは、とても上手かった。でも、今は完璧にモチベーションが下がっていた。こんなやつをベンチにおいていたら、もったいないと思ってしまう。
健太郎「この展開、ヤバくねぇか?」
横から声をかけてきたのは、健太郎だった。健太郎も俺と同じような試合展開を想像していたのかもしれない。
俺 「俺もそう思う」
健太郎「お前、バット振っとけば?」
思わず健太郎の顔を見てしまった。
俺 「なんで?」
急に自分の顔を見られて驚いた様子だ。
健太郎「この感じだと、早く変えることあるだろ?」
俺 「いいよ。めんどくさいし」
打席に入った1番の侑大を見つめた。
健太郎「なんだよ。ハハハハ」
健太郎の言う通り、この展開なら監督は思い切って、選手を交代させることも考えられる。俺は、監督のことがあまり好きじゃなかった。




