3月26日 ピッチャー
ふぅ。もうすぐ4月ということもあり、暖かい季節がもうそばにきているような感覚だった。ボールをとった俺は、ネットに向かってボールを投げこんだ。俺の前には、陵。後ろには侑大、悠太たちが並んでいる。俺がゆっくり列へと戻っていくと、陵は、グローブから手を離して待っていた。
俺 「あー、もうしんどい」
陵 「春季大会終わったのにキツイな」
今日も練習をしていた。すぐに次の大会というわけにはいかなかった俺たちは、地道に練習を繰り返していた。
俺 「陵は、活躍してたから凄いよな」
陵 「全然だよ」
陵は、春の大会2試合で、8打数5安打。1ホームランと大活躍だった。侑大、安田とともに外野のレギュラーとして試合に出ていた。
俺 「このままレフトのポジションとれるかもな」
陵 「それはないよ」
陵は、俺とは違い、しっかりと結果を出してきた。対する、俺は全然結果を出さずに春季大会を迎え、2打数0安打という成績で終わった。もはや、悔しさも何もなかった。
俺 「なんでだよ」
陵 「俺は、未来がわかるからだよ。ハハハハ」
俺 「ハハハ」
妙に納得してしまっていた。
陵 「結局、早川は外野にするのか?」
俺 「まぁ、そうなるんじゃねぇの」
自分のポジションがどこなのか、もはやわからない。それくらい、色々なポジションを周り続けていた。
陵 「守りたいとこないの?」
俺 「ピッチャーかなー」
言った後、なんでそう思ったのだろうか?疑問に思ってしまった。
陵 「やっぱりそうなんだ」
同じことを思っていたと言うのだろうか?
俺 「まぁな。別に今でも、橘や竹田たちにも負けていると思ったことないからな」
これは本音だ。コンディションさえ、整ったら負けるとは全く思わなかった。
陵 「そうだよな。もしかしたら、お前がエースになってたかもしれないよな」
俺 「ああ。それだったら、もっと強かったかもな」
俺がエースかぁ。ありえるわけはないけど、自分が活躍することは想像できた。
陵 「俺も、ピッチャーしたいな」
俺 「たしかに、陵も肩いいからやれるかもな」
陵は、外野の中では、侑大や安田よりも肩が強かった。
陵 「ああ。俺たちでピッチャー直訴しに行こうぜ」
俺 「それは、面白そうだな」
陵 「だろ?」
陵は、同意を求めてきた。




