3月25日 親子ケンカ
朝練習は、もう俺たちしかいなかった。先に来ていた八幡や橘たちは、もう上がって部室に戻っているみたいだった。
俺 「悠太、投げてくれ」
悠太「打つのか?」
俺 「ああ」
バットを取り出し、悠太を見つめた。グローブを持った悠太は、俺から距離をとっていく。
悠太「気合い入ってるな」
俺 「そんなんじゃねぇよ」
今日の俺は、とても機嫌が悪かった。というのも、朝からお母さんと喧嘩をしたからだ。ムカつく。なんだよ、本当に。
悠太「じゃあ、いくよ」
俺 「ああ」
ゆっくりと足を上げ、山なりのボールを放り込んできた。俺は、真芯で捉え打球は、バックネットに突き刺さった。
俺 「もう一球」
悠太「いくよー」
ケンカの原因は朝ご飯に食べたいものがなかったというそれだけだった。なんで、朝ご飯なんかでケンカになってしまうんだ。本当にありえない。思い出しただけでも、苛立ってきてしまう。そんなことで腹を立ててしまう自分にムカついていた。悠太のボールは、一球目より速くなっている。俺は、試合に出れないストレスも合わせてバットを振り抜いた。俺のストレスを表現してくれるように金属音が鳴り響いた。
悠太「ナイスバッティング」
俺 「もう一球こいよ」
怒りを抑えるためにも大きな声を出した。俺が苛立っていることをすでに悠太は気がついているんだろうと思っていた。今度は、山なりのボールがきた。再び、鋭いスイングで大きな音を鳴らした。
悠太「いいね」
俺 「ふぅ」
悠太「疲れてんのか?」
俺 「まさかな」
バッティングは、水もの。そんなことわかっているのに強い打球が飛ばないと納得できなかった。
悠太「もう一球いくぞ」
俺 「まて」
俺は、左手を前に出して、投げるのを静止した。少し動き一度、二度バットを振り抜いた。クソォ!クソォ!なんでだ、なんで上手くいかない。バットを投げたいくらい怒りがこみあげてきた。
悠太「いいか、そろそろ?」
俺 「ああ、こい」
悠太「おけ」
悠太のボールに納得がいかない。
俺 「ちょっと本気で投げてくれないか?」
悠太「俺の肩を壊す気か」
俺 「当たり前だ」
悠太は、何球かネットに投げ始めた。準備が整ってきていた。
悠太「いくぞ!」
俺 「しゃー」
ふぅ。息をゆっくり吐いてボールが来るのを見守った。




